著者 : 名無しさん ID:1ZrFZsAq 氏

その6 - >>256
開始:07/01/29
最終:07/01/29
その6 - >>261

【 良牙×右京 】


薄っすらと靄がかった視界に映し出されるのは、紛うこと無く女の後ろ姿。
流れるような黒髪の下に隠れる白肌が妖艶に浮かび上がり、
その滑らかそうな肌の上を滑り落ちていく布が、はらりと地に落ちた。

華奢な肩が露になったと同時に女がゆるりと振り返るが、顔はぼやけて見えない。
女の細い腕が己の首に周り、
温かい肌の感触と、甘い薫りがふわりと鼻孔を擽る。

何故か自分の体は金縛りにあったようにぴくりとも動かないのだが、
意識ははっきりしていて、興奮しきった頭と体が雄の部分を切なく反応させる。
やばい。と思った瞬間、目の前にある妖艶な口元が蠢いた。

「……何で黙ってんの…?うちの事……嫌い?」

―――え?この声どっかで………。

「うち………良牙やないと……嫌なん……。優しく…してくれる?」

―――え……?右……京―――?

「う、右京!?」

覚醒するかのように一気に身を起こすも、そこはむさ苦しいテントの中だった。

何だ、夢か……。それにしてもリアルな夢だったぜ…。
しかも……右京………。

夢見が良かったのか悪かったのか、良牙は未だ虚ろな表情で思考を巡らした。

夢だけど……可愛かったかも………。
あんな可愛い女だったっけ……。
最後に顔がちらっと見えたけどいじらしく頬を赤く染めてて―――

「ん?げっ!?」

下半身に目をやるとぐっしょりと濡れており、その不快感で一気に目が覚めた。
間抜けな事に良牙は夢精したのだった。



「………ここは何処だ」

その後、天童家に向かおうとした最中、案の定良牙は道に迷ってしまった。
辺りはもう日が沈まりかけており、茜色に染まった空が虚しく揺らめいている。
その上凍えるような寒さが身を貫き、余計孤独感を煽った。

「あれ?良牙やないの?」

不意に聞き覚えのある声がした。

「……右京?」

そこには首を傾げて立っている右京の姿があった。

「な、何でお前がここにいるんだ?こんな遠くて見知らぬ土地に…」
「何言っとんねん?また迷子になったんかぁ……、しょうが無いやっちゃなぁ」

右京はため息を一つ吐くと、「うちそこやで?」
と良牙の目の前にあるお好み焼きやうっちゃんの暖簾を指差した。

****

「これ食べたら、乱ちゃん家まで連れてったる」
「悪いな……」

キツネ色に焼かれたお好み焼きをひっくり返しながら右京は言った。
香ばしいソースの薫りが忘れていた空腹を思い出させ、良牙は一気に平らげる。

「めっちゃ空腹やったんやなぁ、本間困ったやっちゃ」

苦笑いした右京の声が妙に柔らかく感じたのは気の所為か。
それと同時に今朝見た夢を思い出し、良牙の顔が見る間に赤く染まった。

俺は何を考えているんだ……。あれは夢なんだ!

迫り来る卑猥な思考に葛藤しながら良牙は頭をふるふると振るう。

「何しとんねん?」
「はっ!」

頬杖を付き、きょんとした顔で尋ねる右京の口元に自然と目が行ってしまう。

(良牙や無いと……嫌なん……)
「だぁぁぁ!!やめろぉ!」

夢で見た彼女の妖艶な唇と柔らかな肌を忘れようとすればする程、
映像が色濃く蘇り良牙は頭を抱え込んだ。



俺は何を考えているんだ……。あれは夢なんだ!

迫り来る卑猥な思考に葛藤しながら良牙は頭をふるふると振るう。
「変なやっちゃなー」

呆れ顔で見つめる右京だが、まさか悩みの原因が自分だとは知る由も無く。

「ほな、ぼちぼち行こか」
「ぉ…お、おう…!」

動揺を隠せないまま、良牙は勢い良く引き戸を開けた。
しかし、視界に広がる景色を前に唖然とした。

「…あ、雪や……」

なんと雪が積もっていたのだ。
今日は一段と冷えると思っていた矢先。
まだ降り始めて大して時間は経っていないだろうに、
結構積もっており、激しく降る雪は止む気配は無い。

まるで先程とは別世界のような景色が広がり、
新雪の白の所為か、夜とは思えない程明るい空であった。
良牙は間抜けなくらい口をポカンと開け、その場に立ち竦んだ。

「あーぁ……。明日は大雪やなぁ。しゃーないなぁ……あんた泊まって行き」
「……ぇ……え?えぇええ!?」

まさかの右京の言葉に良牙は後退りをしておののく。

「なんつー声出してんねん。こんな雪の中歩くなんて、うち嫌やで。
あんた一人で行ってもいいけど……迷子になって凍死するのがオチや」

確かに。と良牙は納得するが、
男女二人、一つ屋根の下で寝るなど健全な男子であれば冷静でいられる筈が無い。
それに加えてあの夢の所為で、余計理性を保っていられるか自身が無かった。

当の右京は微塵も良牙を男として意識していないようだ。
それも何処か悲しいが今の良牙の心境では、変に意識されてるよりは良いだろう。
良牙はしぶしぶ頷いた。

「すまんな……」



「なっ!?」

目の前に敷かれた二枚の布団を見て良牙は固まった。

「ごめんやで。部屋一つしか無いんや。狭いけど我慢してな」

確かに狭い部屋で、六畳ほどの和室に簡素な家具が置いてあるだけだった。
とてもじゃ無いが若い女の部屋とは思えない。

「お、俺下で寝ようかな?さ、さすがに同じ部屋ってのは…」
「別にええけど?何や…あんたさっきから変やで?
まさかやらしい事考えとるんとちゃうな?まぁ、あんたにそんな度胸無いやろうけど」

あははは、と笑う右京を見て馬鹿にされたような気分になった良牙は、
何処か意固地になっていたのかも知れない。
「やっぱりここで寝る」と低く呟いた。
まったく意識されてない上に舐められてるなんて…少なからず男のプライドが傷付く。

「…つーか、お前と俺の布団違わねーか?」
「え?あぁ、毛布うちの分しか無いねんよ。悪いけど我慢してくれへん?」
「毛布どころか…これタオルケットだろ!」

わなわなと手を震わせ良牙は薄いタオルケットを持ち上げる。
敷き布団も薄い煎餅布団であった。

「もぅ、しゃーないやんか。あんた毎晩野宿しとるんやし、ちょっと位の寒さなん
て平気やろ?…文句ばっか言うんやったら外で寝たらええやんか」

右京に早口でまくしたてられ、良牙は返す言葉が無く口を噤んだ。
確かに野宿よりは遥かにましであるが
隣に目をやれば柔らかそうな布団と毛布が輝いて見え、一層虚しさを煽った。

「さ、寒い…!」

薄いタオルケットに疼くまるも、余りの寒さの所為で眠れない。
身を震わせながら右京の方を見れば、
温かそうな布団の中で気持ち良さそうにまどろんでいる。
何だか自分がひどく惨めに思えてきた良牙は、半ば自暴自棄になっていた。



「な、なぁ右京?」
「ん…」
「そ、そっちに行っていいか?さ、寒くて眠れないんだ」
「ぅ…ん…」

半分寝ているのだろうか、曖昧な返事しか返ってこない。
良牙は生唾を飲み込むと、意を決したように彼女の布団に足を入れた。

あったけー……。
右京の体温と温まった毛布が冷えた体に柔らかな温もりを与える。
大袈裟だがまるで地獄から天国に来たような心地よさに、
良牙はほっと安堵のため息を漏らした。

だがそれも束の間。
直ぐ隣には右京の顔がある。
枕に広がる長い髪からシャンプーの甘い薫りがして今朝の夢が脳裏に浮かんだ。
夢と同じ白い肌と潤った唇が目の前にある。
柔らかな彼女の吐息がかかり、鼓動が鼓膜に響くが如く激しく高鳴る。
良牙の理性が飛ぶ一歩手前であった。

「………ぅ…ん…。…何で…こっちにおるん……?」

右京に触れようとした刹那、彼女が目を開けた。

「あっ…い、いや。寒いから!さっき聞いたらお前うん。って返事し、してたぞ!」

焦った良牙は必死になって言い訳する。
罵声が飛んで来るか、はたまたビンタか、と思った矢先、右京の表情は意外なものだった。
まだ朦朧としているのか、虚ろな表情でふわりと微笑すると柔らかい声で言った。

「……あほやなぁ。一緒に寝たかったら…最初から言えばええのに…」
「え」

胸が急激に昂揚し、それと同時に焦げるような衝動に駆り立てられる。
乱馬が好きだなんて実は嘘で……ま、まさか右京は俺の事を―――?
良牙お得意の勘違いが始まった。

「う、右京……。俺も…実はお前の事が……
その、気になって…今朝から…………って……おい!」

上擦った声で言葉を紡ぐが、当の右京は寝ていた。



「…ん…らん…ちゃん……」

寝入った右京の口から漏れるのは、やはりあの男の名で――
一瞬でも勘違いした自分が愚かだったと知らされるには十分だった。
それと同時に、良牙の中で言いようも無い憤りが燃え上がる。

どいつもこいつも……乱馬乱馬って……!

「おい…!おい!右京!!」

心地良く寝入っている右京の肩をきつく掴むと激しくゆすった。

「ん……、何……?」
「お前……寝惚けてただろ?」
「は?……え?…てか…何であんたこっちにおるんよ……?」
「……寒いんだよ!」
「ちょ…いやや!あっち行ってよ!」

どうやら、右京は完全に目を覚ましたらしい。
驚いた様子で布団から身を起こした。

先程はやはり寝惚けていて、乱馬の夢でも見ていたのだろう。
恐らく、自分と乱馬を間違えたのだ。
そう思うと良牙の苛立ちは更に拍車を駆けた。

「…布団無いんやから我慢してって言ったやろ?
あんたには悪いけど、暫らくしたら温かくなるし……あ、ストーブ付けたろか?」
「……いらん。……こっちの方が温かいし」
「な、何言ってんの?…無理やって…本間…勘弁して」

心底困ったような表情で女が言う。
先程右京に言われた「あんたにそんな度胸無いやろうけど」という言葉と、
乱馬の事、そして今朝の夢―――
良牙の中で全てが一つになった時、理性は崩れ、狂気に変わってて行くだけだった。

「…言っとくけど俺も一応男だ。度胸が無いって?はっ……俺を甘く見るなよ」
「…何言って……あんなん冗談やんか…
あんたを信用しとるから……家に泊めたんやで?」
「……悪いが…もう無理だ」
「え…きゃっ……」

短く言い捨てると、右京の腕をきつく掴み、布団の上に組み敷いた。
余りに一瞬の出来事で、右京は抵抗する間も無く体を強張らせている。

「…ちょ…っと…やめ……」

普段と違う良牙の様子に怯えているとさえ思える。
小さな口から漏れる否定の言葉は寒さからなのか、恐怖からなのか――僅かに震えていた。

カーテンが閉じられている窓には降り注ぐ雪の影が映し出され、
いつもより明るい夜が女の肌を仄かに白く照らし上げる。

一度キレた良牙を止める術は無いだろう。
自分自身でも制御出来ない憤りと欲求が、女を前に益々膨れ上がって行った。






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