著者 : 名無しさん@ピンキー ID:L2yY8uZE 氏

その4 ー >>094
開始:06/05/10
最終:06/08/29
その4 − >>813

【 良牙×らんま

湿った部屋は湿気を吸い込んだ古い木目のすえた香りが充満している。
瞼が開くより先に、その鼻腔を突く香りで朦朧としていた意識が蘇った。

外は未だ雨が降り続いているのだろうか、
湿気っぽいこの部屋と微かに聞こえる雨音がそれを明瞭にしている。

「ん…」

意識が蘇るにつれ、鼻腔を突く匂いが余りに不快に思えた。
それは吐き気さえ感じる程で、
湿った部屋の香りと共に性行為独特のあの生臭い香りがする。
酷く不快だが、腐った果実のようにそれは甘く、
まるで媚薬を盛られたように脳内が一瞬霞んだ。

この香りは危険だ、と感じ重い脚を上げた瞬間、
腰がくだけるようにらんまは床にへたれ込んでしまった。

下半身が言う事を聞かない上に
慣れない行為に身体が付いて行けないのだろう。
初めて感じる倦怠感は意識するごとに酷くなり、
重石を敷かれたように益々身体が重くなる。

べたべたと湿気が纏わり付く床には汗や体液が混じっているのだろう。
気持ち悪くて仕方が無い。
自分の足元に目をやると、
血と精液が混ざり合ったピンク色をした液体が太腿から脹脛辺りに伝っていた。

悪い夢でも見ているかのようだ。
先程の異様な光景が鮮明に蘇る。
見たくも無いビデオを停止したくても出来ないような――
次から次へと頭の中に映像が送り込まれる。


「……らん…ま…?」

頭を抱え、伏せていると男の低い声が聞こえた。

「起きてたのかよ…」

バツが悪いのか、まともに目を合わせる事が出来ない。
大きな瞳を泳がせ、素っ気無く答えるのがやっとだった。

「らんま…お前これからどーするつもりなんだ?
そんな状態であかねさんに会えないよな…?じゃあ……もう女の―――」

「やめろよ!!」

「……ごめん……」

男の言葉を遮ってらんまが激しく罵声を浴びせる。
女の甲高い声が狭い部屋に響き渡った。

らんまの表情は見えず、何を思っているのかさえ分からない。
良牙は小さな声で謝ることしか出来なかった。

沈黙の中、雨音だけが聞こえる。
取り返しのつかない事をしてしまったのか、否、これで良かったのか。

良牙は瞼を閉じながら静かに考えた。
狂おしいまでに胸が締め付けられるのは、相手が本当は男だからか、其れとも友人だからか。
一歩通行で決して交わらない想いが良牙を苛ませた、酷くとても酷く―――。


あの瞬間を今でも鮮明に覚えている。
瞳に映るのは先程まで拳を交えた男では無く、華奢で可憐な少女だった。

風が空に溶け込んで行くかのように一瞬して心を奪われた。
恐らく瞬きをするのさえ忘れ、目を見開いて彼女を凝視していただろう。

「ぁ……乱馬か…?」

「なんて顔してやがる、まるで幽霊でも見たような顔じゃねーか」

俺の過剰な驚きに彼女はぶっきらぼうに答えた。
きっと見られたくなかったのだろう。
俺だって見たくは無かった、知りたくは無かった――。

呪泉郷の事、変身体質の事、全てを聞いた後も信じられなかった。
だって今瞳に映るのはらんまでは無く、ただの女だ。

色素の薄い細い髪と透き通るような肌、長い睫、赤く潤う唇、
華奢な肩と豊満な胸、細い手足は男の性を導くのに十分な程で
風と共に薫る匂いさえも女のものだった。

正しく本物の女と何一つ変わらない偽者の女だ。

「おい、聞いてんのか?折角説明してやってんのに。ぼけーっとしやがって」

「え?あぁ……聞いてる」

呆けている俺にらんまが口を尖らす。
その内慣れるだろ、と言った後らんまはその場を後にした。

その日から何かに支配されていくように俺の脳裏は歪んで行った。
捩れて狂った後にはきっと取り返しが付かない事になっているだろう。

「ふっ…冗談じゃないぜ」

有り得ないと自分に言い聞かせるのがやっとであったが、もう手遅れな気がした。


「おい、おい!!良牙!」

まどろむ意識の中、女の声が煩く響く。
瞼を開けると、蛍光灯の灯りが目を眩ませた。

「ん…何だよ、気持ち良く寝てるのに…」

「お前またあかねの部屋に行ったんだってな!この豚野郎…いい加減にしろよっ!!」

「ふ…そんなにPちゃんが羨ましいか」

「アホか!!羨ましくもなんともねーよ!あんなずん胴女!」

俺があかねさんと寝た翌朝は必ずと言っていい程らんまは罵声を浴びせた。
偶然だとは思うが、俺と会う時は何故か女の姿が多く、それが更に心を苦しめた。
何度「女の姿で現れるな」と言っても「は?偶然だし」としか言わなかった。

「おい!今日から寝る時は俺の部屋で寝ろ、もしまたあかねの部屋に行ったら
その場で湯ぶっかけてやるからな!」

「は?ま、待てよ!お前と一緒に寝るなんて死んでも嫌だぜ」

「俺だって嫌だよっ。でもあかねの部屋にいかれちゃ困る。
どうせ今日は親父も旅行でいねーし布団余ってから」

「ちょ、それじゃあ余計……い、いや何でも無い…分かった…」

「は?変な野郎だな。まぁどうでもいいけど、あかねとは寝るな!分かったな!」

それだけ言うとらんまは去って行った。
俺の気持ちなんて微塵も知らずに――それが余計残酷でもあるのだが。
らんまが男の姿であれば、何も感じ無いのだから別に何も心配は要らないだろう。

俺はらんまへの想いをあかねさんを好きだ、という嘘で隠している。
彼女は俺の事なんて針の先ほども想っていないし、身近な人物ともあって丁度良いと思ったからだ。
自分の気持ちを誤魔化せるというのもあるが、一番はらんま本人に悟られたくは無いという想いが強い。

しかし、誤魔化せるのは刹那であって、嘘を重ねる度に胸が痛んだ。
あいつが女の時、俺は乱馬として見ていない。
他の、一人の女として見ているのだろう。

これを恋と言うのなら余りにも狂っている。
自分に、嫌悪感が湧く。

全て夢なら良いのに――そう願わずにはいられ無い。


その晩、予想していた展開とは違い、らんまは女だった。
狭い部屋には窮屈そうに二枚の布団が並び、それの間には僅かな隙間さえも無い。
こんな状況で安らかに眠る事は皆無であろう。

「……おい…何で女なんだよ…」

「別にどうでもいいだろ…熱かったから水浴びただけ」

「お、お前一応俺は男なんだぞ!!」

つい出てしまった言葉にはっとするもらんまは眉を歪ませる事も無く、
「はぁ?何言ってやがんだ」と言って布団に入った。

危うくこの薄汚れた想いがバレるんでは無いかと鼓動が早まったが、そんな心配は無いようだ。
らんまは何も考えておらず、男と女の意識さえも全くしていない。
逆に虚しい気もするが、これが当たり前なのだろう。

当然眠れず、横にいる女が気になって仕方無かった。
寝返りを打つ度に漏れる吐息が
妙に厭らしく感じたのはきっと俺が邪な考えを持っているからだろう。

しかし、彼女の姿を見て冷静でいられる男はいない筈。

下着なんか付けていない胸はくっきりと谷間が見え、
薄いタンクトップからは乳首の形がはっきりと分かる。
男物のトランクスからは太腿が剥き出しになっており、
月明かりが彼女の白い肌を青白く浮かび上がらせていた。

触れたい衝動を抑え、喉奥で生唾を飲むと布団を被った。
しかし、すっかり冴えてしまった脳は休まる訳が無く、滾った下半身に手をやる。
らんまに悟られないように静かに自慰をし、理性を保つのがやっとであった。

そんな自分が酷く情け無い。
次第に霞んでいく意識の中、頬を伝う涙だけがやけに熱く感じられた。


朝、起きると隣にらんまの姿は無かった。
やたら眩しい太陽の光が目を眩まし、
朝がとっくに過ぎている事に気付くのに暫らく時間がかかった。

「おまえ、いつまで寝てんだ?」

居間で昼食を取っているらんまがぶっきらぼうに口を開いた。
素麺だけという素っ気の無い昼食が酷く空腹だった事を思い出させ、
俺は仕方なくらんまの隣に座り、一緒に素麺を啜った。

朝方まで眠れなかった俺の気も知らず、
らんまはいつもと同じタンクトップにトランクスという刺激的な格好だった。
夏場でいくら暑いからと言ってもその格好は反則だろう。
目のやり場が無いのは勿論、意識すればする程、奴の肌を視界に入れてしまう。

「なぁ…他のみんなは何処行ったんだ?」

居間にらんましかいないのにやっと気付いた。
あかねさんも、おじさん達もいない。

「なんかみんな用事があるとかで出かけたぜ。今日は日曜だしな」

麺を頬張りながら、らんまが言う。
てことは…二人きりか…益々気まずい。
気まずいのは俺だけだろうが。

「それよりさぁ…お前いつまでいるんだよ?
自分の家に帰らなくていいのか?旅の途中で寄ってるみたいだけど」

「別に…家に帰っても誰もいないしな、全員方向音痴で顔を会わすのは年に二回ぐらいだ」

「ふぅん」

どうでも良い会話をしながら、少し濃い麺汁を一気に飲み干した。
麺と食せば丁度良いが、市販の麺汁を水で薄めていないこれは…酷く辛い。

しかし、こいついつまで女でいるんだろう。
暑い、暑いと言いながら片足を立て、
うちわで仰いでいる姿は何処から見ても女じゃないのに――。


「おお!!おさげの女ではないか!」

その時、庭から男の声がした。
この糞暑いのに胴着なんか来てやがる…こいつ九能だったっけ?

「九能?何でここにいんだよっ…、この糞暑いのにてめぇの顔なんざ見たくねぇ」

心底不機嫌そうにらんまが言うが、お構いなしに
づかづか家に上がりちゃっかり隣に腰を降ろしてやがる。

「天道あかねに会いに来たのだが、おさげの女に会ってしまうとは。
やはり運命だ!僕は運命を感じるぞー!!」

「うるせぇ…」

どうでも良いけどうざい男だな、余計暑くなる。

「む…、君は誰だ?」

さっきからずっと隣にいるのに今気付いたのかよ。
九能は眉を歪ませ、俺を睨んだ。

「貴様に関係無いだろ」

「初対面の相手に向かって貴様とは………さては君もお下げの女を狙っているのか?
そうなんだな!?…貴様…お下げの女は渡さんぞ!!」

「な、…何言ってやがる!?お、俺は別にらんまなんか狙ってねーよ!」

「君は……嘘を付いてるな…その証拠に…顔が赤いぞ!」

!?なぁぁぁぁ―――!!??

「ば、ば、馬鹿か!!これは暑いからだ!!」

この九能って奴の所為で余計挙動不審になってしまう。
最悪だ…これじゃあもうバレバレじゃないのか?
顔から火が出るくらい熱い…焼けそうだ。

「つーかお前等うるせぇ…どっか行ってやれよ」

その熱を一瞬で消し去るようにらんまが冷えた声で言った。
尚も団扇を仰ぎながら、心底うっとおしそうに伏目がちに俺達を睨む。

「すまんな…おさげの女…僕が悪かった。そんな顔しないでおくれ」

九能は謝りながら、らんまの肩に手を添える。
まるで汚らわしいモノが彼女の肌に触れるかのようで、
苛立ちと共に針を刺されたかのように胸がチクリと痛む。

先程の失態も有り、その場にいるのがたまらなく嫌で俺は逃げるように家を飛び出した。
しかし、こっちの方がかえって不自然だ…。


つんざくような蝉の鳴き声と、うだるような暑さに一気に体中の汗が噴き出す。
頭が痛くなるような日差しは何処まで歩いても変わらず、俺を照らし続けた。

「ぃ…!おいっ!!良牙!!」

遠くで女の声がした。
振り返ると、息を切らしながら走るらんまの姿があった。
下着姿では無く、ちゃんと衣服を纏っている。
汗を流し、頬を紅潮させ、必死に追ってきたようだ。
この糞暑い中、俺の為に……止めてくれ。
お前が何とも思っていない事でも、俺は酷く意識してしまうから。

「はぁ…はぁっ…お前何処行くんだよ?方向音痴の癖にっ…」

方向音痴の俺を心配したって事か?
そんな気、奴には無いにしろ、俺は馬鹿だからそう思ってしまう。
頼むから、期待させないでくれ。

「べ、別にいいだろ!散歩だよ」
「この糞暑いのに?」
「うるせぇな…九能はどうしたんだ?」
「あぁ?うっとうしいから飛ばしといた」
「そうか………」
「…帰ろうぜ」

僅かに微笑むらんま。
その顔がもうどうしようも無く、可愛くて愛しくて、
心の底から彼女だけを欲している自分がいる。

「おい、良牙?」
「ぁ…」

少し濡れた髪が妙に色っぽくて、その微笑んだ瞳と首を傾げる仕草が
今の今まで耐えていた俺の理性を吹き飛ばそうとしていた。

もう我慢する必要は無い――。
耳元で悪魔がそう囁いている。

「ら、らんま!!」
「?」

気が付けば、彼女の細い腕を掴んでいた。
疑惑の色を宿した瞳でじっと俺の顔を覗き込む。
余りに可愛すぎて、俺の思考能力がどんどん低下して行く。
もう、駄目だ――後悔する事は分かっているのに抑えられない。

「良牙……?」

あれだけ晴れ渡っていた空は、急に鉛色に染まり行く。
遠くで雷鳴が聴こえた気がした。


「おい!おいってば!何処行くんだよ!?」

気付けば、らんまの細い腕を引いてがむしゃらに歩いていた。
もうじき雨が降ろうとしている。
このままだと豚になっていまい、何もかも終わってしまう。
急いで飛び出して来た為、傘は持っておらず、
焦りと不安が押し寄せて来る。

「いい加減にしろよ!」

とうとう痺れを切らしたのか、らんまは俺の手を強く振り払った。

「良牙・・・何なんだ?
方向音痴のお前がただ歩いても目的地なんて決まって無いだろ?」

「・・・・・・話が・・・ある・・・」

絞り出すように出した声は情けない程に小さく、
らんまは聞き取れなかったのか踵を返す。
その手を無理に取って俺は再び歩いた。

雷鳴は遠くで蠢いているのだろうか、ゴロゴロと不快な音が鼓膜に響き、
鉛色の雲が俺達を追うように近づいて来る。

「良牙、話があるなら家でいいだろ?お前豚になるぞ・・・」

どうやら先程の声はらんまに届いていたようだ。
心なしか声が小さいのは、俺の尋常では無い行動を諭してだろうか。
今の俺には僅かな余裕も無い、何処を歩いているのかさえ検討が付かないのだ。

5分程歩いただろうか、気付けば林の中だった。
草木のツンとした香りが鼻を擽る。
らんまはもう何も言わず、黙って俺に手を引かれるままだった。


少し行った所に寧良く小さな小屋があった。
恐らく誰も使って無いのだろう、外観は薄汚く、
木目で出来たそれには苔がびっしり生えている。
その重い扉を開けた。

中は狭く、埃臭い。
何年も放置されいるのが一目瞭然だ。
これと言って物は置いておらず、人が住んでいた形跡などは一切無い。
恐らく、誰かが休憩の為に建てた小屋だろう。

扉を閉めた途端、雨音がした。
豪雨なのか、酷く煩いその音は苛立ちさえ覚える。
らんまは呆れた表情で、小屋の中を一回りすると
溜め息と共に言葉を吐き出した。

「・・・で?話しって何だよ?こんな所まで連れて来たからには
相当大事な話しなんだろうな?」

「・・・・あ・・あぁ・・・すまん・・・こんな所まで・・・連れて来てしまって・・・
その・・・あの・・・話しってのは・・・えっと・・・・・・その・・・・・・」

いざ話そうとすると言葉が出て来ない。
さっきまでの勢いは何処に行ったのだろうか・・・我ながら情けない。

「おい〜〜、お前なぁ!ここまで引っ張って来てそれかよっ。
もういい加減にしろよ、俺はお前に付き合ってる程暇じゃねーんだよ!」

とうとうらんまを怒らせてしまった。
無理も無いだろうな、そりゃ怒るだろう・・・。
でも怖い、気持ちを伝えたところで彼女はどんな顔をするだろうか。
きっと軽蔑するに違いない。

「あー!!もうっ!はっきりしねー野郎だな!
うじうじしやがって!言いたい事があるなら言えよ!!」

「っ・・・・・・えっと・・・その・・・」

「あぁ!!むかつく!阿保か!俺は帰る!」

らんまが去ろうとした瞬間、俺の中で何かが弾けた。
極度の緊張が限界を迎え、全身の血液が頭に昇って行く。


「りょ、良牙・・・・・・!?」

気付けば、俺はらんまを押し倒していた。
喉奥から言葉を絞り出した。

「・・・・・・好きだ・・・ずっと前から・・・お前が・・・・・・」

とうとう言ってしまった。
顔が真っ赤に染まり行くのが自分でも分かる。
湯でも沸かせそうだ。

「は?」

「・・・・・・本気だ・・・会った時から・・・俺は・・・あかねさんじゃく・・・
お前が・・・お前しか見てなかった・・・」

「お、おい!?お前何言ってんだよ?
・・・冗談は止めてくれよ、会った時からって・・・俺は男だし・・・」

「違う・・・・・・女の・・・お前に会った時からだ・・・冗談じゃなんかじゃないんだ、
・・・軽蔑するかも知れないが・・・本気なんだ・・・」

「・・・・・・それで?お前はどうしたいんだ?
俺の気持ち、知りながら告白したんだろ?・・・じゃあ答えは出てるよな?」

思ってもいない事を言われた。
らんまは嘲り笑うでも無く、軽蔑する訳でも無く冷静だった。
確かに無理に決まっている、分かっていたのに止められ無くて
こんな所までらんまを連れて来て・・・しかも押し倒して・・・何やってんだ・・・俺。
自分ではどうにも出来ないからって相手の事も考えずに、本当に勝手だな。

「・・・・・・別に・・・俺は誰にも言わねーから」


伏目がちに小さい声でらんまは言った。
長い睫が揺れている。

何故、どうして・・・お前はそんなに優しいんだ。
まだ嘲り笑ってくれた方が良かった。
こっちの方が余りに残酷すぎる。

「良牙・・・・・・俺・・・お前の前で無神経すぎたな・・・女になるの控えるよ」

「っ・・・」

もう駄目だ、彼女を傷つけたくないのに、欲求が爆発しそうだ。
無理に手に入れても虚しさが増すだけなのに、分かっているのに。
そんな、優しい顔で優しい言葉を吐かないでくれ。

ふと目を反らせば赤く潤う唇と細く白い首筋が鮮明に映し出される。
それが今、俺の直ぐ目下にある。
らんまだけがずっと欲しかったから――他には何もいらない。

生唾を飲み込む音がした。
自我を保っていた意識がとうとう暴走する。

「んっ・・・・・・」

ずっと欲しかったその唇を無理矢理塞いだ。
余りに柔らかい唇が俺の欲を誘う。

「りょ、良牙っ・・・んっ・・・んん・・・・・・!」

顔を背け、全身で俺を拒むらんま。
その顎を無理に掴み、食い尽くすように唇と口内を貪った。
後悔するのは分かっている筈なのに、抑えられない。

未だ強く降る雨が俺の異常な行動を駆り立てている気がした。

部屋が一層熱く感じる。
滾った身体から熱を発しているように、身体の深から熱い。

今から俺はらんまを深く傷つける。
男であるのに同じ男に犯される屈辱は耐え難いものだろう。

きっと永遠に彼女を心から手に入れる事は不可能だ。
それならいっそ、身体だけでも俺の物にしたい。
それが例え、愛しい人を傷つける行為だとしても。

最初は気持ちだけ伝えればそれでいいと思っていたのに
心の底から薄汚い欲望が滲み出て来る。
自分に軽蔑と吐き気さえ覚えながらも、休む事無くらんまの身体を貪った。
後で必ず後悔するのは分かっているのに、もう止められ無かった。

「良牙っ…やめろっ…こんなのおかしいって!いやだ…!」

組み敷かれている女は精一杯の抵抗を見せた。
目尻に涙を浮かべ、良牙の身体を力いっぱい押しのけるが
どれも虚しく終わるだけだった。

いくら抵抗しても本気で押さえ付ける男の力には抗え無いだろう。
それでも普通の女に比べれば一筋縄では行かない。
それ以上に良牙の欲に狂った力の方が遥かに勝るのだろう。
どれだけもがいても直ぐに押さえ付けられ、
痣が出来てしまうのでは無いかというぐらい強く手首を握られた。

「良牙!!頼むから…!!俺は男だし、お前だってこんな事望んで無いだろ!?」

良牙の動きが一瞬止まる。

ずっと欲しかった物がやっと手に入る、だが未だ心の底では葛藤している自分がいる。
こんなの間違っている筈なのに、止める術を知らない良牙は
自ら自我を解くように激しくらんまの唇を貪った。


息吐く暇も無いようなキスに呼吸が激しく乱れ、混ざり合った唾液がらんまの顎を伝う。
紅潮したらんまの肌を見る度に良牙の雄の部分が更に刺激される。

唇を重ねたまま、らんまの胸元へ手を伸ばした。
片手で引き千切るように衣服を脱がせると、
今まで偶然にしか見た事の無かった豊満な乳房が露になる。

良牙にとっては余りに刺激的だったのだろう、生唾をゴクリと飲み込む。
今にも鼻血が出て来そうになるのを堪えながら、その胸にむしゃぶり付いた。

「あぁっ…!!やめ…ろ…!はぁん…ゃ…だっ…!!」

柔らかい肌を男のゴツゴツとした手が這う。
きつく揉みしだくと壊れてしまうのでは無いかというくらい、
繊細で柔らかい乳房を片手で撫で回し、もう片方の乳房に舌を這わせた。

先端の乳首を舌先で嘗め回すと、らんまの声が一層甘くなる。
昔一度だけ見たAVビデオのような、やらしい声で鳴くその様が良牙を堪らなく興奮させる。

乳房に触れていた良牙の手が下着の中へと伸びる。
薄く、柔らかな繁みを通り、既に濡れているらんまの膣へ指を這わした。

「ぁ…あ…そこは…無理…マジでっ…これ以上は…本当にやめてくれ!!」

危険を悟ったらんまが再び、抵抗を見せる。
しかし良牙の指がある部分に触れた瞬間、
今までに無い快楽が電流が走るように全身を駆け巡った。

「あぁっ…ぁっ…いやぁ…りょ…がっ…やめ…っ」

クリトリスを中指の腹で愛撫される度、言葉にならない声でらんまは喘ぐ。
溢れ出る愛液が下着をぐっしょりと濡らしていた。


「らんま…可愛いぜ…もっと声出してくれ」

片方の指でクリトリスを攻め、もう片方の指を膣内に入れ、らんまの快感を誘う良牙。
恐らく自慰行為すらした事が無いであろう、らんまの幼い女の部分が赤く染まって行く。

「はぁんっ…何…言ってっ…いやぁっ…駄目っ…!あぁっ…!!」

愛撫だけで達してしまったらんまを心底愛しいと感じた。
肩で荒く呼吸をしているらんまをきつく抱き締め、
火照る彼女の頬に手を触れると優しくキスをした。

「らんま…好きだ…もう自分の気持ちを誤魔化せない……その…抱いて…いいか…?」

「………は?何今更言ってんだよ…お前…散々ここまでやっておきながら…
どうせ拒んでも無理にでもやるつもりなんだろ…?」

「……そ、それは……」

虚ろな瞳のまま、良牙思っている事を言い当てると
せつなそうに張り上がった良牙の性器に衣服の上から触れた。
鉄の棒のように固くなったそれは、触れられるだけで爆発しそうで
それに加えて、らんまの意外な行動に一瞬良牙はたじろぐ。

「…こんなにしやがって…お前相当溜まってんじゃねーのか?
……やれれば誰でもいいんだろ?」

「なっ…違う!!それは絶対違う!……お前だから……」

頬を染め、必死い否定する良牙。

その姿を冷めた瞳で一瞥され、一瞬嘲るようにらんまが笑った気がする。
しかし、その時は気付かなかった。
いや素知らぬ振りをしていただけかも知れない。


「…お、おい!」

いきなり、良牙の衣服と下着をズリ降ろし始めるらんま。
目の前に現れた良牙の性器は思った以上に大きく、
浮き出る太い血管が更にその淫猥さを強調していた。
それを自らの手で愛撫するらんま。

「…らんま…やめてくれ…いき…そう…」

垂れていた髪をかきあげると、らんまは良牙の性器に舌を這わせた。
予想もしなかったらんまの行動に驚きを隠せないが、
愛しい女が自分の性器を愛撫してくれている、しかも口で。
その光景を見ているだけで意識が飛びそうだった。

真っ赤な舌を覗かせ、丁寧に舐め上げ、小さな口で咥える。
余りに大きい良牙のそれは全部収まりきらず、喉奥で支えた。

「はぁ…ぁ…らんま…駄目…だ…」

言った瞬間、らんまの口内に溢れんばかりの白濁を吐き出した。
ゴホゴホと咽ながら、唇から白濁を垂らすらんまの姿が再び欲を滾らせ、
今達したばかりなのに、下半身は再び熱くなる。

らんまの不可解な行動に違和感を覚える訳でも無く、
良牙は勢いのまま、らんまを組み敷いた。

そのまま下半身に手を伸ばし、抵抗させる暇も与えず、
再び硬くなった性器を捩じ込むようにらんまの膣へ一気に挿入した。

「あぁぁあっ!!いやっ!痛いっ!あぁぁぁ!!」

どれ程の痛みが彼女を貫いたのだろう、
寄生を発する子供のように喚き、もがくらんま。

細い腰が宙に舞い、身体を反らせ、痛みと圧迫に耐える姿が
酷く心を締め付けたが、良牙は素知らぬ振りをして腰を打ち付けた。
初めて味わう女の身体は想像以上に気持ち良くて、心地良く、
何より頭が真っ白になりそうな程、興奮する。

次第に甘い声で鳴き、口を開け、指を咥えながらよがるらんま。
煩い雨音など一切耳には入らず、吐息と粘膜の擦れる音だけが良牙の鼓膜を支配した。

「あぁ…ん…ぁ…あっ…いいっ…ぁあっ…」

俺に犯されている事など忘れてしまったかのように、らんまは卑猥な声で喘ぎ続けた。

雌蜘蛛が雄蜘蛛を喰らう為に罠を仕掛ける。
何も知らず、それに騙される雄蜘蛛を間抜けに思うと同時に、哀れだとも思う。
一瞬、そんな事が頭をよぎった。


らんまの桜色をした幼い膣は熟れた果実のように赤く染まり、
良牙の性器を根本まで咥え込んでいた。
腰を引く度に卑猥な液体が水音と共に膣から溢れ、
良牙の太腿までぐっしょりと濡らしていた。

腰を動かす度に、柔らかい肉壁と性器が擦れ、
何とも言えない快感が体中を駆け巡る。
すっぽりと自分を咥え込んだらんまの膣を見て、
良牙の興奮は更に高まり、腰を打ち付けるスピードも徐々に早くなった。

「あぁ…くぅんっ…はぁんっ…いいっ…い…いよ…もっと…」

いつしか、らんまの腕は良牙の背に回され、その快楽を示すように爪を立てる。
僅かな痛みにさえ気付かず、良牙は必死に腰を打ち付けた。

「はぁ…らんま…いい…いいぞ…もっと…もっとだ…」

よがるらんまの細い腰を持ち上げ、
下から更に打ち付けるとらんまは一層高い声で鳴いた。
良牙に抱かれている事など、女のように喘ぐ自分の姿など微塵も頭に無いように
必死に快楽だけをらんまは貪った。

一定のリズムで膣が収縮し、先程、らんまの口で達したばかりだと言うのに、
益々膨れ上がる性器に良牙は限界を感じた。

子宮まで届きそうな程、深く突き上げ、
肌と肌がぶつかり合う無機質な音がより一層激しくなる。
未だ雨は降り続いているのだろうか。
聞こえるのは、彼女の声と肌がぶつかり合う音、厭らしい粘膜の音だけだった。

「あっ…ぁあっ…いやっ…!中は…良牙っ…!あぁぁ―――っ!!」

良牙の性器が一層硬く感じた直後、嫌な予感がしてらんまは声を荒げた。
全ての血液が性器に滾った如く酷い快楽を感じ、
それが軽く痙攣すると、良牙はらんまの中に勢いよく白濁を吐き出した。

物凄い勢いで膣内が満たされ、ゆっくりと良牙が性器を抜くと
収まり切らなかった白濁が糸を引きながらどっと溢れ出た。

「はぁ…はぁ…お前…馬鹿な事しやがって……どうしてくれんだよ」

余韻の残るらんまが肩で息をしながら、呟く。
未だ意識がはっきりしていない良牙は、脱力した身をらんまに預けたまま瞼を閉じた。


あぁ、やっぱり俺は取り返しの付かない事をしてしまったんだ。
目覚めると頭を抱え、小さく伏せているらんまの姿が目に入った。

こうなる事を何処かで期待していた俺と、
後悔するのは分かっているのに過ちを犯した事を悔やむ俺がいる。
一番傷つけたく無いものを傷つけ、プライドまでずたずたにし、壊してしまったんだ。
しかし、出て来る言葉は皮肉なもんで――。

「らんま…お前これからどーするつもりなんだ?
そんな状態であかねさんに会えないよな…?じゃあ……もう女の―――」

「やめろよ!!」

「……ごめん……」

どれくらい沈黙が続いたのだろうか、
行為の最中には気にも留めなかった雨音が今は煩いくらいに鼓膜に響く。
先に口を開いたのはらんまだった。

「…良牙……俺だって悪かったよ…なんつーか、
知らない内にお前を誘惑してたって言うか…さっきだって…俺からも………した訳だし……」

言葉を濁すらんまだが、行為中の事を言っているのだろう。
しかし、全面的に俺が悪いのは百も承知だ。

「すまん…らんま。俺が悪いんだ…取り返しのつかない事をしてしまった…
許してくれとは言えないけど…・…今日の事は忘れてくれ…
でも俺が言った言葉は嘘じゃない、本当にお前の事が――」

らんまは何も言わなかった。
そりゃそうだよな、だってこいつ男な訳だし男の俺に好かれても嬉しい訳が無い。
むしろ、嫌悪感でいっぱいだろう。
再び、沈黙が続いた。

雨は上がったのだろうか、雨音はもう聞こえず、
眩しいくらいに照り付けていた太陽は沈みかけているようだ。
扉の隙間から茜色に染まる光が差し込んだ。


「……らんま帰れ…、俺は暫らく旅に出るから」

こんなに胸が苦しいのは初めてだった。
今まで通り普通に会話する事さえ許され無いかも知れない、もう終わりだ。
しかし、らんまの口から出た言葉に俺は心底驚愕した。

「良牙……待てよ…実は俺もお前の事…その…気になってて…
でも俺は男だから異常かなって思ってて……お前の事考え無いようにしてたんだ…
……だから…その…俺は異常かも知れないけど……多分お前と一緒の気持ち…かも…」

恥ずかしそうにそう呟くらんまの姿に信じられない程、俺は目を見開いていただろう。
体中の汗が噴き出したかのように、かぁっと熱くなった。

気付けば力いっぱいらんまを抱きしめていた。
目頭が焼けるように熱くなり、鼓動が早くなるのを抑えられない。
もう明日死んでもいい気がした、それくらい嬉しかったから。

「りょ、良牙……」

ぎこちなく俺の背に回される細い腕は僅かに震えており、
そんならんまをせつないくらいに愛しく感じた。

この事は二人だけの秘密にしようと言い、
いつか時が来たらあかねさんにも話すとらんま言ってくれた。

その時、俺は馬鹿みたいに浮かれていただろう。
将来はどうするとか、らんまを止水桶で女に固定し結婚するとか、
子供は何人とか、夢みたいな妄想ばかりしていた。

しかし、もうとっくに嵌っていたんだ。
それは俺が彼女を目に焼き付けた時から始まっていたのだろう。
緻密で洗練された甘い罠、絹のように繊細で美しい蜘蛛の巣に―――。


「はぁ…ん…ぁあっ……」

柔らかな皮膚が熱を帯び、薄っすらと赤く染まる。
僅かに濡れたそれは、俺の皮膚へとしなやかに纏わり付いた。

乱れる呼吸も彼女の表情も何もかもが、一瞬夢のように感じる。
目を開けば全て夢だったのではないか、そんな日がいつか来るのでは無いかと。
言いようの無い不安を覚え、きつく腕を回し、華奢な彼女の身体を力強く抱き締めた。

「あぁっ…痛いよ…良牙っ…ぁは…あぁっ――」

「らんま…何処にも行かないでくれ…ずっと…俺の側にいてくれ…」

懇願する俺に返答はせず、らんまは大きな喘ぎを漏らし達した。
何度らんまを抱いても、何処か不安だった。
同時に自分が心底らんまに惚れているという事を改めて思い知らされたが。

「良牙…お前最近おかしいぞ?時々怖く感じるよ」

らんまの言った言葉に息を飲んだ。
確かに異常とも呼べるくらい俺はこいつに執着してるかも知れない。
自分かこんな寂しい男だとは思わなかったぜ、らんまを失う事ばかり考えてる。

「すまん」

らんまの頭をそっと撫で、優しく抱いてやると恥ずかしそうに

「な、なんだよ。きしょくわりーな」

と言って頬を赤らめた。
そんなこいつが可愛くてたまらない、ずっと女のままで俺のモノでいてくれればいいのに。

しかし、現実はそんな甘いものじゃなく。
らんまはシャワーを浴びるとさっと服を来て、また明日な〜と帰って行った。

男の姿に戻ると、余計現実に戻った実感が湧く。
先程まで俺に抱かれていた可愛らしい女の子の面影は何処にも無い。


あの日から他の人達に怪しまれないよう、こっそりと俺の家で会う事になっていた。
らんまは予定が無い限り、学校帰りに俺の家へ寄って行き、そのまま身体を重ねるだけだった。
俺は普通のデートがしたいのに、誰かに見られたら困るだろ、とらんまは拒むばかりで。
そんな日常が重なってか、らんまに対する不満が募り、束縛が激しくなって行くばかりだ。

最初は想いを伝えるだけでいいと思っていたが、手に入れたらこの有りだ。
真に無いものねだりの子供のようで、酷く情けない。



「う…」

朝、目覚めると酷く身体がだるかった。
夏風邪かと思い、医者へ行こうと思ったが迷子になるのを恐れ、結局家で寝る事にした。
窓から外を眺めると、暑い日ざしを強調するかのようにアスファルトが揺らめいている。

その先に立っている人影を見てはっとした。
あかねさんだ。

「ごめんね、こんな時間に…具合悪かった?」

「いえ…ちょっと風邪引いただけですから」

学校に行く途中らしい、彼女は少し怪訝そうな顔をして話しを切り出した。

「最近ね、らんまがおかしいの。帰りも一人で帰っちゃうし……
それで、こないだ後を付けてみたの。……そしたら、ここに入って行ったわ。
……もしかして毎日良牙君の家に来てるの?」

「え……いや、その……」

まさか、あかねさんに勘付かれているとは。
いや、まだ勘付かれた訳じゃ無い。

「……何してるの?」

「……んっと…その…あの…えっと…男同士の大事な話しというか…」

しばしあかねさんは黙っていたが、納得したように大きく息を吸い込むと言葉を続けた。

「そう…良かったわ。…またらんまが良牙君の事からかってるんじゃないんかと心配してたのよ。
らんまったら、いつも変な風に笑ってたから」

「え?変な風って…?」

「楽しそうに笑ってたわ」

彼女はそれだけ言うと、急いでるから〜と言って部屋を後にした。
楽しそう?それは俺との毎日が充実してるらだろうか、其れとも他の意味があるからか。
何処か胸に引っ掛かる感じがして気味が悪い、布団を被って硬く目を瞑った。


「……が…おい!良牙……!!」

まどろむ中、女の甲高い声がして目が覚めた。
見上げると怒った顔でらんまが立っていた。

「何回呼べば分かるんだよ、おめーは」

朝から今まで寝ていたらしい、頭はぼーっとするが、身体は少し楽になっている。

「……ちょっとだるくて…」

「風邪か?あんま無理すんなよ。じゃ、今日は帰るわ」

「待ってくれ…帰らないでくれ…」

俺は踵を返し、去ろうとするらんまの服を引っ張る。
だってそうだろう、目的はセックスだけか。

「………だってお前風邪引いてんだろ?出来ねーじゃん」

「だから…!やらねーって!只、側にいてくれるだけでいいから……らんま」

「………良牙…ごめん…腹減ってるし、帰るわ、また明日」

俺の気持ちなんて全く理解しようとはせず、
らんまはいつものようににこっと笑うと俺の手を振り払った。
その彼女の表情に、行動に、何故か異様に腹が立ち、気付けばベッドにらんまを組み敷いていた。

「…なんだよ?やるのか?」

「違う…!お前俺の事どー思ってるんだ?只やる目的か?
毎日ここに来て、脚開いて馬鹿みたいに喘いでるだけじゃねーか!
本当に俺の事……好きのか!?」

とうとう爆発してしまったようだ。
言ってはならない事を口走ってしまった。
大きな蹴りが来ると思ったが、思わぬ言葉が帰って来た。

「良牙…お前そんな風に俺の事見てたのか…酷い…」

瞳を潤ませ、震えた声で言う彼女に呆気を取られ、頭に昇った血が一気に引いて行く。
しかし、ここで下がってはこないだと一緒なのだ。
以前もこんな事があったから。
らんまを失うのを恐れ、言い出せなかったのだ。


「らんま……今日あかねさんが来たんだ。
お前の行動が最近怪しいってな。それだけじゃ無い、
お前楽しそうに笑ってるそうじゃないか。………どういう意味だ?」

あかねさんの名前を出されてらんまは表情を変える。
先程まで潤んでいた瞳が何処か暗い影を宿していた。

「あかねが来たのか……。どういう意味って…分かってるだろ?
お前との毎日が楽しいから笑ってるんだよ、悪いか?」

「……本当なのか?……じゃあ何で早くあかねさんに言ってくれないんだよ?
前に言うって言ってただろ?こんな隠れてこそこそ会うのは嫌なんだ」

らんまは暫らく黙っていた。
静まり返った部屋の中で、時間を刻む時計の音だけが聞こえる。
鼓動が早くなって行くのが、先程までの身体のだるさを思い出させた。

「……めんどくせぇ。…もういい。飽きた」

沈黙を破ったのは、らんまの声だ。
信じられない言葉に一瞬耳を疑うが、聞き返す間も無く、らんまは言葉を続ける。

いつしか思った事が脳裏をよぎる、やはり罠に嵌ったんだと。
微かに勘付いていたのに、そう思いたく無くて、思い出さないように蓋をした。
なんて愚かなんだろう。

「…良牙…もう飽きたから終わりしようぜ。
つーか最初から、遊びだったけどな…、お前が余りにも面白いからからかってやったんだよ。
いつ気付くかなって思ったけど、お前にしちゃあ早かったなぁ。
もうちょい遊んでも良かったけど、……お前重いし、いちいちうっとうしい」

早口で捲し立てるらんまの声が、俺には十分過ぎる程ゆっくりと聞き取れた。
何かが音を立てて崩れていくように、俺の心は粉々に崩れて行く。
頬を伝う涙だけは、皮肉にも暖かくて。
そんな俺を見て、嘲るようにらんまは言った。

「おいおい……、何も泣く事ねーだろ。
まさか、俺が本気とか思ってた?はは…んな訳ねーだろ。
俺は男なんだし、……ただ、女でやるセックスが余りに気持ち良かったから、
ちょっと嵌っただけだよ。お前だってただでヤレたんだし、特したと思えよ」

ぽんぽんと喪失している俺の肩を叩き、らんはま身体を起こすと、
乱れた髪を整え、じゃあな、と部屋を後にしようとした。

その瞬間、電流のように身体に熱が走った。
このまま、返すなんて余りにも理不尽だ。


「うわっ…!ちょ…良牙…離せよ!」

酷く乱暴にらんまを床に押し倒した。
どすんという音が響くが、かまわない。

俺は涙を流しながら、狂ったようにらんまの服を破り、白い肌にむしゃぶり付いた。
らんまに弄ばれていたという悲痛な感情は、彼女をめちゃくちゃに抱く事でしか収まらない。
いや、抱いたってきっと何も変わりはしないだろう。
らんまを失う恐怖より、らんまに裏切られたという怒りの方が今は大きかった。

「くそ……!純粋な気持ちを…俺の純粋な気持ちを弄びやがって…!
めちゃくちゃにしてやる…!」

「……何言ってんだよ…、
今更こんな事したって無駄なんだよ。何も感じねーよ」

余裕を見せるこいつの表情に更に腹が立つ。

「それに……お前の気持ち最初から知ってたんだよ…!
女の俺を見る目が・・・おかしかったから。
面白いからわざと…お前の前では女の格好でいたんだよっ……
そしたら見事に騙されやがって。お前の顔見てると笑い堪えるので必死だったぜ」

まるで心臓に太い杭が刺さったかのようだ。
らんまがここまで最低の人間だとは思わなかった。
殺意を覚える程に、怒りは益々膨らんで行く。

「きゃあ!…っ…てーな!!」

らんまの顔面を思い切り殴り、抵抗する両腕と煩い口を
近くにあったガムテープで止めてやった。

「らんまよ……お前みたいな最低な野郎は殺してやっても気が済まない程だ」

俺の目の色が尋常じゃない事を諭したのだろう、
先程まで余裕だったらんまの表情が僅かに強張る。

下半身の衣服も乱暴に破り、その破れかけた下着の隙間から
まだ濡れていない秘所に己を宛がうと、俺は一気に突き上げた。

「ん―――!!」

滑りが悪く、俺でさえ僅かに痛む。
らんまはもっと痛かったのだろう、塞がれた口からくぐもった声だけが響いた。


ガムテープで塞がれたらんま口から漏れる声はいつもより低く、
眉を歪め、首を振る彼女は僅かながら恐怖に怯えているように見える。
それが俺にとって唯一の救いだろう。
いや、もっと恐怖に怯えてくれないと俺の心が持たない。
らんまを酷く傷つければ、この胸の痛みが一瞬でも忘れられるような気がしたから。

「ん…んっ…ん――!」

激しく腰を打つ度に、くぐもった声がする。
構わず奥深くまで腰を沈め、乾いた膣内に激しく突き上げた。
気持ち良いとか、痛いとかそんな事はどうだって良い。
乱れるらんまの髪を強く引っ張った。

「痛いか?…らんま…俺の痛みはこんなもんじゃない…
お前にめちゃくちゃにされた俺の痛みはな……!」

らんまの顔を乱暴に床に叩き付け、露出された胸に歯を立て強く愛撫した。
口の中に錆びた鉄のような血の味広がる。
彼女の顔面をもっと殴ってめちゃくちゃにしてやりたかったが、流石にそれは出来なかった。

やがて、下半身に血が滾るように、快楽が昇り付めて行く。
勢いよくその欲望をらんまの中に吐き出した。

「おい…らんま。このままずっと女でいるか?どうなるだろうなぁ…。」

一瞬、らんまの表情が凍り付く。
俺は耳元で囁いた。

「この部屋でずっとお前を監禁したらどうなる?
暫らく男に戻らなかったら……子供が…出来るんじゃないか?
そしたら、俺と結婚するしか無いよな…?」

らんまは目を開き、俺を睨み付けた。
今の俺は狂っているだろう。
愛情が憎しみに変わる時、人は悪魔に魂を売ったように残酷になれる。
こいつは最初から俺を弄び、飽きたら捨てたんだ。
今度は俺の番だろう?

取れかけているガムテープを勢い良く剥がすと、らんまが冷めた口調で言った。

「気が済んだか?何度乱暴に抱いたって今更何も感じねーよ。
子供とか変な妄想に取り憑かれてんじゃねー、分かったならさっさとどけ」

「っ……!」

らんまの頭を押さえ付け、後から再び突き上げた。
先程出した液体に所為か、滑りが良く、自身を突き上げる度にらんまの太腿に伝って行く。
何度でも吐き出して、孕ませてやろうと思った時。

「ぁ…あぁっ…良牙っ…好き…」

らんまが甘い声で鳴いた。
好きという言葉に俺は一瞬腰を引いてしまう。
その瞬間、らんまの大きな蹴りが腹に飛んだ。
空かさず、腕に巻かれているガムテープを取ると、重い拳が再び腹に入る。
その不意打ちに俺の視界は一瞬で暗く染まって行った。


「よう。起きたか」

目覚めると、らんまの姿があった。
身体を動かそうとしかた瞬間、縄で縛られてる事に気が付いた。

「らんま!!貴様!!」

「悪いな。うっとうしいから、そうさせて貰ったぜ」

今になって、だるさが身体を襲い、今日は風邪っぽかったのだと思い出す。
余裕の表情でらんまは俺の顎を掴んだ。

「良牙…良い話しをしてやる。
俺はな、お前の事なんて好きじゃねーし、ましてや男だ。
ただな、セックスは楽しい。特に女の身体でするのはな、男の時とはまた違った快感がある」

「…お前…まさか…あかねさんを…!」

「おいおい…早とちりすんなよ。女はあかねだけじゃねーんだ。
俺はお前と違ってもてるんだよ、女には困らねーよ」

鼻で笑いなが、嘲けるようにらんまは呟く。
最早こいつは俺の知っているらんまでは無かった。
一人の女だけを想い続けた俺とは全く正反対で、性にふしだらな最低な野郎だ。

「かと言って、男に抱かれるのははっきり言って気持悪い。
九能なんて簡単にやれるんだろうけど、考えただけでも鳥肌もんだ。
最初、お前が告白して来た時、見事に騙されてくれたなって楽しんでたが…
まさか勢いで抱かれる羽目になろうとはな。
ま、思ったより、…思った以上にか。気持ち良かったから、嵌ったんだけど……」

目を細め、にこりと笑うと、らんまは俺の頬を撫でた。
氷のようなその微笑に本当は怒りが込み上げてくる筈なんだろうけど、
おかしな薬をあてられたかのように、魅せられてしまう。

「……お前俺の事好きなんだろ?ずっと前から好きだったんだろ?
俺が欲しくて堪らなかった?俺をオカズに一人で寂しく自慰行為した?」

「やめろっ!!違う…好きじゃねー!お前の事なんて好きじゃねー!」

「……フフ…ハハ…嘘付け。好きなんだろ?俺の事。
今も本当は好きで好きでどうしようも無いんだろ?
この何ヶ月間はお前にとって幸せだったんだろ?好きな女思う存分抱けて。」

「違う!!俺は…そんなっ…そんなふしだらな想いでお前を抱いたんじゃない!
……もっと、もっと―――」


「純粋な気持ちだった。とでも言うのか?
そんな野郎が少しでも嫌がる女を抱くか?覚えてるだろ?
俺は少なからず拒んだんだ。それをお前は無理に抱いた。
それって、ただ自分の欲望を満たしたかった。……違うか?」

「……違う…違う!!」

「それに……お前はいかれてるぜ。
俺は本当は男なんだ。その俺を本気で好きになるなんてな」

「お前だって…、男の癖に男に抱かれて気持ち良いなんて…十分いかれてるじゃねーか!」

しなやかならんまの腕が俺の首に絡む。
耳元で囁きながら、言葉を続けた。

「でもな…俺は男を好きなんて思った事無いぜ。
ただ、快楽の為だ。それ以外の何者でもねーよ。
お前の方がずっといかれてる」

「貴様…!」

怒りに満ちた目でらんまの顔を睨んだ。
こいつは本当に悪魔のような野郎だ、軽蔑とさえ覚える程に。

「フフ…ハハ…ハハハ…
そんなに怒るんじゃねーよ。で…話しを戻すけどよ。
お前がいちいちうっとうしい事言わねーなら、このまま関係続けてもいいぜ。
お前だって、ただでやれるんだし特だろ。
…それに俺の事好きなんだろ?俺に会えなくなるのは嫌だろ?
その変わり、それ以上の関係を求めるなよ、好きとかそういうのいらねーから」

「…っ…ふざけるな!いい加減にしろ!誰がそんなことするか!」

「あ、そう。お前にとっちゃあ良い話しだと思うけどな〜。
どうせモテねーんだし、女とヤレるなんざ滅多に無いぜ?」

俺は軽蔑するかのように、らんまを睨んだ。
人を馬鹿にしやがって、蔑むのもいい加減にしろ。
ずっとこいつを想っていた自分自身にさえ、酷く軽蔑する。

「……まぁ、嫌なら無理にとは言わねーよ。
じゃあな、楽しかったぜ。ピーちゃん」

俺の頬に口付けすると、らんまは部屋を後にした。
純粋だと思っていた少女は淫猥で穢れており、まるで売女のようだ。
美しい仮面を被った悪魔に気付かず、騙された。

そう言えば、あいつの口から一度も好きという言葉は聞かなかった。
先程の嘘の言葉を除けば――。
嘘だと分かっているのに、一瞬でも身を引いた自分が情けない。
あのまま、らんをを何度も犯して、監禁してやれば良かったのに。

もう、涙は出なかった。
らんまとは二度と会う事は無いだろう。
この土地にいるの辛いから旅に出よう。どこか遠い所へ。
胸に大きな穴が開いている、心が凍り付く程寒い――。


何度うなされた事だろうか。
夢に現れては俺を苛ませるんだ。
今では誇りも尊厳も何もかも捨て去った、傷つく事はもう無いだろう。

窓から見えるのは、葉を失った貧弱な枯木だ。
寒さに震えるように、寂しく一人立っている。

この部屋は必要以上に暖房が効いており、酷く暑い。
こうして身体を動かすと、余計に熱を生み、汗が滲む。

俺の真下で腰を振り、快楽に身を委ねる女はやはり売女のように穢れている。
しかし、白い肌と甘い香り、赤い髪、美しい瞳、彼女の全てが俺を魅了させる。
そして彼女の甘い声を聞けば、全身に電流が走ったかのように、背筋がぞくぞくするのだ。
まるで覚めない夢を見ているかのようだ。

「…ぁあっ…あぁ―――っ」

一層高い声で快楽の頂点を味わう彼女。
俺はもう何も感じ無い。
気持ち良いのか、これが何の為の行為なのか最早理解出来なくなっている。
ただ、獣のように激しく交われば、彼女は悦びの声を上げ、嬉しそうに笑うから。

「ハハ…そんな顔すんなよ。もっと楽しめよ」

そう言って、俺の頭を撫で、髪を梳いた。
時折見せる偽りの優しさに俺は騙されてばかりだ。

こんな意味の無い行為、止めようと誓ったのに俺は止められ無かった。
彼女を失うのが怖くて、こんな人形のような生活を選んだんだ。
これは彼女が飽きるまで続くだろう。
いや、俺が彼女を嫌悪する時が来るまで続くだろう。

それは滑稽な操り人形のようだ。
それでも自ら望んだ事に悔いはない。
彼女を抱かなければ禁断症状が出るだろうから。
まるで薬が切れた中毒者のように、悶え苦しみ、狂ったようにもがき続けるだろう。

悪魔のように美しく妖しい笑みを零すと、彼女は俺の背に腕を回した。




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