著者 : 名無しさん@ピンキー ID:Wxh3ScBz 氏

その3 ー >>284
開始:05/10/07
最終:05/10/13
その3 − >>336

【 無 題 】


「い、いやぁ……。あんまり見つめんといて、乱ちゃん……。うち、恥ずかしいわ……。」
「何言ってんだ、うっちゃん……。綺麗だよ……。」

乱馬は右京の店に来ていた。
開店前の準備をしようとしていた右京は、
乱馬によって、カウンターの鉄板の上に押し倒されていた。

乱馬は手馴れた手つきで右京の服の前を開き、
サラシごしに乳房を撫でている。
段々自分の胸の先端が硬くとがっていくのを右京はしっかりと感じていた。

「乱ちゃん……。うち、店開ける準備せんと……。」
「今日は臨時休業ってことにしろよ、うっちゃん。どうせ準備中の札出しっぱなしなんだしさ。」
「うう……。でもぉ……。ひどいわ乱ちゃん……。神聖な鉄板の上でなんて。」
「おれはお好み焼きよりもうっちゃんが食べたいんだよ。」
「も、もぉ……あほぉ……。」


きっかけは些細なことだった。
数日前、乱馬と右京の通う風林館高校では、ミスター&ミス風林館コンテストを開催していた。
事前に立候補者を募り、全生徒による投票によって優勝が決定される。
体育館でファッションショーのように、私服姿で候補者たちがアピールするイベントもあったのだが、
その際の右京の紺のワンピース姿は、男子生徒たちの目を釘付けにした。
それは、シンプルなデザインだったが、右京の美しいボディラインを強調させつつも、
清楚なイメージを与えるワンピースで、右京が壇上に立った途端、男たちがざわついた。
 
「誰だ? あの可愛い子。あんな子うちにいたっけ?」
「ばーか、久遠寺右京だろ? あのお好み焼きの。」
「マジ!? へー。普通の格好すればかなり可愛いんじゃん。」
 
コンテストの結果は、女子の優勝はダントツで天道あかねに決まったのだったが、
次点の右京にもファンクラブができるほど、票が集まっていた。
 
「なんでぇ。今までうっちゃんのこと男みたいな扱い方してたくせに。」
 
自分も再会したときには男だと思っていたくせに、乱馬は憤った。
それと同時に、自分の中にくすぶっていた熱い気持ちに気付いたのだった。
(うっちゃんを他の男になんかとられてたまるか。)
 
それまで乱馬はぼんやりと、あかねのことが好きなのだと思っていた。
男勝りで強気で、不器用でおっちょこちょいで、焼きもち焼きで素直じゃなくて、
でも、怖がりで優しくて、笑顔が可愛いあかね。
あかねのことを奪おうとする男が現れるたび、乱馬は彼らを退けてきた。
 
しかし、それは本当に自分が心からしたかったことだろうか? 
ただ、売られた喧嘩を買っていただけではないのだろうか? 
そして、両家の親を始めとして、あかねと乱馬をくっつけようとする周りの雰囲気に流されて、
ただその気になっていただけではないだろうか? 
もし本当にあかねのことが好きなのだったら、もっと早く、良い仲になっていたのではないだろうか? 


その日、朝早くに乱馬は右京の店を訪れた。
 
「いらっしゃーい♪ でも、すいませんねー。まだ準備中で……あ、なんや、乱ちゃんやないの。」
 
営業スマイルから一転、心から嬉しそうな表情を見せる右京。
好きな人の顔を見るだけで、右京は幸せな気持ちになれる。
だが、店をほうきで掃除していた右京は、乱馬が店に入って来た後、
こっそり内側から鍵をかけたのに気付かなかった。
 
「なんやのん? こんな朝早く。まだ鉄板にも火入れてへんから時間かかるで。」
朝食も適当に済ませ、走って来た乱馬は息が上がっている。
「うっちゃん、おれのこと……好きか?」
「なっ……?」
 
突然の問いかけに、右京は一瞬言葉を詰まらせる。
当然ではないか。自分は乱馬に会いたい一心でこの街を訪れ、この街に腰を落ち着けたのだから。
 
「あっ……当たり前やないの……。あほぉ……。なんやねん。急に……。」
「そっか、へへっ。良かった。」
 
耳まで顔を赤く染めた右京を乱馬が優しく抱きしめる。
あまりに驚いたので、右京はほうきを床に落としてしまった。
 
「ら……乱ちゃん……?」
そしてそのまま、乱馬は右京を横に抱き上げ、カウンターの鉄板の上に乗せる。
 
「ら、乱ちゃん!」
 
右京が言った通り、鉄板はまだ温められておらず、ひんやりと冷たい。
 
「つ、つめた……。」
 
鉄板の冷たさに顔をしかめた右京の上に、乱馬が馬乗りになる。
 
「おれのこと……好きなんだよな?」
 
不安げな瞳で乱馬を見上げて、右京は小さくうなずく。
 
「おれも……うっちゃんが欲しいんだ。」
 
着物の帯を解かれ、サラシに巻かれた胸を露わにされた右京は、羞恥に身を固くした。


白いサラシに包まれ、ずっしりと重い感触の乳房に頬擦りをしながら、乱馬は微妙な力を入れて
円を描くように撫でていく。布越しに指先が乳首に当たると、右京はかすかな声をあげた。
 
「うっちゃんの胸って結構大きいね。何が入ってんの?」
「えっと……ら……乱ちゃんへの愛……?」
 
口にしてしまってから右京はその台詞のあまりの恥ずかしさに湯気が出るほど顔を赤くする。
乱馬は、冗談で投げかけた言葉に返された思わぬ可愛らしい返事に微笑む。
 
「ふーん……。うっちゃん……。可愛い……。」
「い、いやぁ……。あんまり見つめんといて、乱ちゃん……。うち、恥ずかしいわ……。」
 
右京は自分を見つめる乱馬のキラキラした瞳に耐え切れず両手で顔を覆い隠した。
 
「何言ってんだ、うっちゃん……。綺麗だよ……。」
 
そういうと乱馬は、非情にも顔を覆い隠す右京の手を剥がして、赤く染まる頬に唇を寄せた。
 
「本当に可愛いなあ……。うっちゃんは。」
 
右京は、乳房を撫でられながらサラシを徐々に剥かれても、抵抗する力も涌かない
自分の体が信じられない。確かに好きな相手ではあるのだけれど、この状況は確実に
「強姦されかけている」という状況なのに。
だが、右京はそっと、一粒の涙をこぼした。


「うっちゃん……? な、なんで泣くんだよ?」
 
声が震える。今流れたのは一粒とはいえ、乱馬は女の涙に弱い。
 
「あんなあ……。うちの心もてあそぶのやめてくれんか? 
 そら、乱ちゃんに抱かれるのは嬉しいことなんやけど……切ないねん。」
 
乱馬は手を止め、右京の弱弱しい言葉に耳を傾ける。
右京は乱馬の顔を見ようともせず、ただ壁の方を見つめてはらはらと涙を流す。
 
「どうせ乱ちゃんはあかねちゃんともこういうことしてるんやろ?」
「してねえよ。こんな……ことはうっちゃんにしかしたことねえ。」
「ウソや! だって……あんな一つ屋根の下で暮らしてて何もないやなんて……。」
 
右京の大きな瞳に、一層大きな涙の粒が生まれた。
 
「乱ちゃんは知らんやろ……? うちが久しぶりに乱ちゃんに逢うたとき、
 既に乱ちゃんにうちとは違う許婚がおったって話聞いたとき……。」
 
泣いている所為で声がかすれる。
 
「うちがどんだけ悲しかったか……! 切なかったか……! 
 そら、乱ちゃんに捨てられたときも悲しかったけど、他の女のとこいくゆうんや
 なかったわけやし、その……。」
「だー! もう、うるせえな。」
 
乱馬は自分の唇でその自分にとって痛い過去を思い出させる音源――右京の口を塞いだ。
いきなりのキスに右京は身を固くする。
 
(ら……乱ちゃん……! 乱ちゃんの唇がうちの唇にっ……!?)
 
生まれて初めてだったのだ。異性と唇を重ねたことなど、ただの一度も無かった。
夢見たことが無いわけではない。クラスの女の子たちが経験したばかりの初デートや
初キスについてきゃあきゃあ語り合っているのを聞いて、羨ましいと思ったことだってある。
 
だが、乱馬はもてる。
怪しげな中国娘にも好かれているし、怪しげな黒薔薇を高笑いで振りまく新体操女にも好かれている。
一番のライバルと思える、らんまのもう一人の許婚のあかねなどは、
乱馬と一つ屋根の下で暮らしているのだ。簡単に上手くいくような恋だとは思っていなかった。
 
それがこんな形で、こんなに突然唇を奪われるなど、予想もしていなかった。
右京は乱馬の少し乾いてかさついた唇を肌で感じながら、目を閉じることもできずぼうっとしていた。


沈黙を破ったのは乱馬の声だった。
 
「おれは、うっちゃんに入れたよ。」
「え……?」
 
何のことやら右京には見当もつかない。
 
「ワンピース、可愛かったよ、うっちゃん。」
 
その言葉でやっと先日のコンテストの投票のことだと理解できた。
でも、右京には乱馬のその言葉が信じられなかった。だって……。
 
「乱ちゃん……。あかねちゃんに入れたんちゃうん?」
 
乱馬はまさか、と首を横に振った。
 
「うっちゃんに入れたよ。当然だろ?」
「当然って……。うちてっきり乱ちゃんは……。」
 
乱馬はあかねが好きなのだなんて、単なる思い込みだった。
まさか乱馬が本当は自分を想っていただなんて思いもしていなかった。
でも、右京にそう思い込ませるだけの状況を乱馬は作り出していたのだから仕方が無い。
いつだって乱馬の傍にはあかねがいた。ただそれだけの事実でも、右京には、
乱馬が自分にとって近くて遠い存在なのだと思えていたのだった。
 
「乱ちゃん……。本当にうちのことが……す、好きなん?」
 
消え入りそうな声で右京は尋ねる。
乱馬は右京の不安な瞳には答えもせず、胸を包み込んでいるサラシに手をかける。
右京は焦った。
 
「あかん……、あかんて乱ちゃん、こんなとこで……!」
 
声は抵抗していても、体は動かない。右京ができたのはただ、目を閉じることだけだった。
乱馬はサラシを剥がし、右京の乳房に直接触れ、いとおしそうに撫でてくる。


「乱ちゃん……。うち、店開ける準備せんと……はんっ……。」
 
乳首を軽く唇で挟まれ、右京が甘く切ない声をあげる。
 
「今日は臨時休業ってことにしろよ、うっちゃん。どうせ準備中の札出しっぱなしなんだしさ。」
「うう……。でもぉ……。ひどいわ乱ちゃん……。神聖な鉄板の上でなんて。」
「おれはお好み焼きよりもうっちゃんが食べたいんだよ。」
「も、もぉ……あほぉ……。」
 
完全に上半身は裸に剥かれてしまった。
右京は、初めて男の目に自分の肌を晒すことが恥ずかし過ぎて、ぎゅっと強く目を閉じて、
ただ乱馬のなすがままになっていた。
 
「うっちゃん、あのワンピース、まだ持ってるの?」
 
乱馬は肌を愛撫する手を休めずに尋ねる。
初めて触れる女の体。
思っていたよりも柔らかで、そっと大事に扱わないと壊れてしまいそうな気がした。
自分が女になったときに触れてみたときとはまた違う。その何倍も刺激的な感触だ。
緊張で思わず手が震えてしまっているのだが、右京には伝わっているのだろうか? 
 
「う……うん……。うちの部屋にあるけど……。」
「着てみて欲しいな。おれだけのために着てみてよ。」
 
乱馬は裸の胸を抱きしめ、頬擦りしながらせがむ。
別に拒む理由は右京にはなかった。
 
「え、ええよ。ほ、ほな、放して。」


お好み焼き屋の二階の部屋。
乱馬に頼まれた通りにワンピースに身を包んだ右京には、少し思うところがあった。
 
(ど、どないしよ……。きれいなぱんつに穿き替えて置いた方がええよな、ここは。)
 
心を決めると、右京はワンピースの下からピンクのショーツを脱いだ。
別に大して汚れているわけではないが、なんとなく、新しいショーツで待っていたい。
 
「うーっちゃん! まだ?」
 
乱馬が着替えが途中でも構わないといった様子で、無神経に部屋の扉を開けた。
脱いだばかりのショーツを手に握っていた右京はびくっと肩を縮めた。
新しいショーツはまだ穿いていない。
 
「ま、まだや! 乱ちゃん、着替え中に入って来るやなんて……。」
 
脚の間をすり抜けるささやかな風がなんだか気持ち悪い。
右京は手に握っていたショーツを背中の後ろに隠し、乱馬の方を振り向く。
 
「なーんだ。全部着てんじゃん、うっちゃん。わざと早く開けたのに。」
「ひ、ひどいわぁ……乱ちゃん。うちが良いて言うまで待っててんか……。」
「わ。やっぱ可愛いじゃん、うっちゃん。」
 
乱馬が右京の傍に近づいてくる。
咄嗟に右京は握っていたものを、近くにたたんでおいてあった自分の服の中に隠した。
幸いなことに乱馬はそのことに気づかない様子で、右京に近づくと、その体を優しく抱きしめた。


「うっちゃん、こんな服も持ってたんだ。」
「う、うん……。この間、街で見かけて買うてん。なんか、着てみたいって思て……。」
 
濃紺のワンピースは、肩が大きく見えるデザインで、その周りを白くて大きな襟が縁取っていた。
素材は合成繊維だが、絹のような手触りだ。乱馬はその手触りを楽しんでくる。
右京はじっと触られるがままになっている。だが、内心はスカートの下が気になって仕方が無い。
布越しに触れながら、乱馬はあることに気づく。
 
「うっちゃん……何ブラジャーなんかつけてんの? せっかく脱がせたのに。」
「せ、せやかて……裸のまんま着るわけには……。」
「良いけどね。うっちゃんのブラジャーなんて貴重だし。」
 
それはワンピースと揃えて買った、ワイン色のTシャツ用のブラジャーだ。
普段サラシを巻いていて、滅多にブラジャーをつけたことのない右京は、
後ろ手にホックを留めることなど苦手だったので、前で留めるタイプのものを選んでいた。
 
「それにおれが脱がせるし……。」
「乱ちゃんのあほぉ……。」
 
ただ触られているだけで、体中に熱が走るのを感じる。
当然だ。誰よりも好きな相手に触られているのだから。
体をまさぐる乱馬の手が、スカートの方に伸びる。
そして、その布を徐々にたぐりよせ、右京の白い太ももを露わにさせる。
 
「ちょ、ちょお、待ってんか、乱ちゃん。」
「ん? 何?」
「あ、え、えっと……。」
「良いじゃん、触るくらい。」
 
白い太ももを撫でながら、乱馬は右京の頬にキスをしてくる。
右京は下着をつけていない部分を気にしつつも、角度を変えて乱馬の唇に唇を寄せる。


「あかん……?」
 
答えは感触で返された。熱く湿った感触が、右京の唇を蹂躙する。
どちらともなく舌が口の中に差し入れられる。まるで格闘するかのようにお互いの舌は絡み合う。
乱馬は右京を抱きながらその背中に手を回し、器用な手つきでチャックを下げる。
 
「可愛いよ、うっちゃん……。」
 
ワイン色のブラジャーが顔を見せる。買ったばかりでほとんどつけたことのないブラジャーだ。
Tシャツなど、体にフィットする服を着るときに線が見えないようにするためのデザインなので、
レースはなく、つるりとした表面になっている。
そのつるつるとした触感をほどほどに楽しむと、乱馬は迷わずフロントホックに手をかける。
体を触っている間に、後ろにホックがないのは確認済みなのだ。
 
(な、なんやねん乱ちゃん……やけに詳しいやん……。)
 
その知識はどこで手に入れたかというのは恐ろしいので聞かないことにして、
右京はひたすら乱馬の愛撫に身を任せる。
 
「うっちゃんはなんでおれのことが好きなんだ?」
「そんなの……わかれへん。うちは子供の頃からずっと乱ちゃんのことが好きやったんやで?
 今更理由なんて聞かれてもうまいこと言葉にならんわ。」
 
そう言いながら右京は思い出す。
小さい頃に初めて乱馬と会ったときのこと。毎日のお好み焼きを賭けた攻防戦のこと。
楽しく遊んだこと。裏切られて逃げられて、それでも心のどこかで好きだったこと。
再会して、自分が女だとわかってもらえたとき、何度も可愛いと言ってもらったこと。
 
「乱ちゃんは?」
「おれはねー……。」
 
乱馬の手が右京の腰に下がり、そして更にその下へとおりていく。
 
「可愛いから、かな。今、ぱんつ穿いてない?」
 
右京はスカート越しに直接撫でられる臀部への刺激に身を固くし、
あまりの恥ずかしさの頂点に、火が出そうなほど顔を赤くした。


「うっちゃんって意外と淫乱ー。いつもノーパンなの?」
「ち、ちゃう! こ、これは乱ちゃんが……。」
「あ、おれのために準備してたんだ。用意が良いね。」
「ち、ちゃう……。」
 
とてもではないが顔など見られるはずもない。右京は顔を背け、ただただ体を強張らせている。
 
「なーに目そらしてんの。」
 
乱馬はそんな右京を仰向けに押し倒し、その首筋に顔をうずめる。
左手がスカートの中に入り込んで、右京が焦る。
思わず体を持ち上げ抵抗しようとすると、唇にまた唇が重ねられる。
 
「うっちゃん……。ここのことなんて呼ぶか知ってる?」
 
差し入れられた手はすぐに脚と脚のちょうど真ん中に到達し、そこを執拗に撫でる。
くちゅくちゅとかすかな水音が聞こえてくる。
右京は赤面しながらも、乱馬が指でなぞっているその場所の名前を口にした。
 
「おめこ……やろ?」
「へ? あ……あれ?」
 
期待していた単語と違う単語が出てきたので乱馬は思わず手を止めてしまう。
右京はそのことは気にも留めず、心なしか声を震わせている。
 
「なんやのん! 乱ちゃん。女の口からこないなエロエロな言葉言わして!」
「あ、はは。そっか、うっちゃんは関西出身だもんな……。」
 
改めて自分と右京の育ちの違いを感じた。
乱馬が通っていた男子校では別の名前が広く通用していた。
だから、右京の口にした単語は自分ではちっとも恥ずかしいようには思えず、
むしろなんだか可愛らしいような感じさえしてしまう。
だが、ここで男の側がその言葉を卑猥に感じるかは問題ではない。
女が卑猥な言葉だと感じて口にしているかどうかが重要なのだ。
右京はそんな言葉を言わされたことに対して、恥じらい、乱馬に対するちょっとした怒り
そんなものを感じている。それで十分だ。


「でも、うっちゃん……よく知ってたね……。」
「う、うち、男子校にいたんやもん……。聞いたことくらいは……。」
「ふーん。でもさ、意味まで調べてるんでしょ?」
「せ、せやかて知らないことは聞いとかな……。」
「でも、エロ関係の言葉だってことくらいは気づいてたんだよね……?」
「そ……そんなん……わからへん……。」
「そうなんでしょ……?」
 
乱馬はわざと耳元でそうやって言葉で右京を追い詰めているのだった。
耳元に、首筋に、温かい息を感じ、右京は体を振るわせる。
触れている秘部からは、次から次へと温かい液が流れ出てくる。
 
「ら、乱ちゃんのあほぉ……もうやめてや……。うち恥ずかしくて……。」
「はは……かわいい……うっちゃん……。」
「あっ……ら、乱ちゃん……!」
 
乱馬は右京の胸の谷間に顔をうずめていた。
ホックは既にはずれ、乳房を覆っていた部分はもうそこにはない。
ブラジャーは肩にその紐を引っ掛けているだけだ。
 
「乱ちゃん……! ああんっ……はぁっ……。」
 
右京の声が一段と艶かしさを増し、高くなる。
乱馬は今度は無言でひたすら右京の体を舌や指を使って愛していく。
右京の体がその与えられるばかりの快感に耐え切れなくなった頃、乱馬は尋ねた。
 
「ねえ、そろそろいい?」
 
右京が無言でうなずくのを確認すると、乱馬はなにがしかを懐から取り出した。
 
「安心してよ。うっちゃん。おれ、ちゃんと用意してきたから。」
 
乱馬は服を着たまま、局部だけを露出させ、その取り出したものを装着しようとした。


だが、思ったより手間取り、上手くいかない。
 
「も、もう、何してんねん! 乱ちゃん。」
 
体にまとっていた熱を時間と共に冷やしてしまった右京が怒鳴りつける。
先ほどまでと立場が一変してしまったようだ。
乱馬は余計に焦ってしまい、上手くそれを装着することができない。
 
「あ、あれ? おかしいな……。」
 
半裸の右京が傍に寄り、その場所を覗き込む。
乱馬は慌てて隠そうとするが、右京は問答無用でその手を振り払い、見つめる。
 
「もう、貸して。うちがやったる。」
 
そう言って、乱馬の手からコンドームを取り上げる。
初めて見る男の一物。しかも、その男は自分のずっと恋焦がれていた相手。
右京は戸惑いを覚えないわけではないが、それよりもむしろ愛しさが勝ってしまう。
 
(は、入るんやろか……? こんなん……。うちの体の中に……?)
 
(でも……乱ちゃんのやもん……なんや可愛い……。)
 
気がつけば右京は、そこに口付けをしていた。そして、いかにも愛しいと言った表情で
そこを撫でられれば、乱馬も興奮してしまう。
軽く撫でていただけなのに大きくなってきたそれに驚きつつも、右京はコンドームを
かぶせてみる。くるくると巻かれていたゴムの膜をほどくように広げていく。
ただそれだけされるだけでも、乱馬の男の部分には激しく火がついた。
 
「乱ちゃん……。うち……乱ちゃんとひとつに……。」
 
「なりたい」なんて最後まで言わなくても、乱馬にはわかっていた。
優しげな瞳で右京を見つめ、その体を抱きしめる。
 
「いいよ。ひとつになろう。うっちゃん……。」


ことが終わった後、乱馬は右京の体を軽く抱き、壁にもたれかかっていた。
右京の長い髪の手触りを楽しみつつ、ぼそりと呟く。
 
「おれ、お好み焼き屋やりたいな。」
 
右京ははっとして乱馬を見上げる。
それはひょっとして、遠回しのプロポーズというものだろうか? 
 
「うっちゃんと。」
 
笑顔が向けられる。優しい笑顔。右京の大好きな笑顔だった。
 
「うちも……。乱ちゃんとお好み焼き屋一緒にやるの、夢やってん。」
 
顔を赤くして右京も微笑みかける。だが、瞳はそらさない。
じっと見つめあい、微笑みあった。
 
「けどな、乱ちゃん。乱ちゃんは板前姿より女の姿で看板娘やってくれる方が店が儲かりそうやね。」
 
一瞬冷たい空気が流れ、それまでの甘いムードが吹き飛ばされた。
しかし、右京に体をぴったりと寄せ付けられ、頬にキスを受けると、乱馬もまた
優しい雰囲気に戻り、髪を撫で始めた。
 
(乱ちゃんの板さん姿を他の女なんかに見せられるかい……。)
 
 
「お好み焼き屋うっちゃん」はその日一日中臨時休業の札を出していた。
                                                  (終)




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