著者 : 933 ID:muc/2TUX 氏

その1 ー >>933
開始:04/04/13
最終:04/06/28
その2 − >>166

無 題

「あ〜〜・・・!」
らんまの声が天道家に響き渡る。
「あら、らんま君、お風呂で何か叫んでいるわよ」
かすみの何事にも動じない相変わらずの穏やかな口調は、たとえどんな状態であったとしても緊張感を与えない。
「また、らんま何か仕出かしたわね、ちょっと様子見てくる」
天道家に早乙女一家が来てからというもの、一月に一回は必ずと言ってよい程、風呂場の何処かを壊される。
毎回毎回如何をやったらそんな壊れかたをするのか疑問になるほどだ。
この前は水道の蛇口を折って脱衣所を水浸しにしたばかりだ。
「らんま〜、今女の子?」
「あぁ」
心もとない返事が風呂の中から返ってきた。
「じゃあ、開けるわよ」
あかねは風呂の扉をゆっくり開いた。しかし、何処もおかしいところも無く、普段どおりの風呂場がそこにあった。
いつもなら、悲鳴が聞こえたならば、窓ガラスの1枚は割れている勢いだ。
「ねぇ、らんま、なにがあったの?」
「ねぇ、じゃねえよ、俺は今お湯に入っているんだぜ」
情けなさそうに、あかねの顔を眺め、深いため息をついた。


「えっ!?」
あかねは驚きのあまり言葉を失った。
そこにはお湯に浸かっても女の子のらんまがいた。
「なにがなんだかさっぱり分からねぇよ」
何が自分の体の変身を固定させたのか全く分からない。まあ、今日は一日女でいた訳であるのだが、一日中女でいる事なんて日常茶飯事だったし、特に変わった事もしていない。
数ヶ月前、ハーブに止水桶の水をかけられた時のようだった、が、その時とは何かが違っていた。何が違うのかと言われると答えられないのだが、何か感覚的におかしいのだ。
「ま、まあ取り合えず、お風呂に入って温まって出てきなさい」
あかねはそういうと風呂場を後にした。


風呂を上がり居間に行くと、案の定、天道一家勢揃いでらんまを出迎えた。
風呂上りの艶やかな顔をしたらんまの顔を一同が見つめる。
「な、なんだよ、あかねから聞いただろ?」
幾ら、家族同然のお付き合いでも、流石にこれだけの顔ぶれで一斉に見つめられると照れるものだ。
すこし赤くなり、下を向いたらんまの顔を覗き込むように、早雲が話しかける。
「らんまくーん、何で男に戻らなくなっちゃったの?」
まるでこの世の終わりのような顔をしながら喋る早雲に、少し苦笑しながららんまは答えた。
「しらねぇよ、いきなり男に戻らなくなっちまったんだからな」
「ま、まあ、明日にでもシャンプーのお婆ちゃんにでも聞いてみましょう」
あかねは食い入るようにらんまを見つめる早雲を引き離し、らんまの横に座らせた。
らんまは、自分がいきなり完全な女の子に突然なってしまうとは夢にも思わなかった。
最近心なしか女の子でいる時間が長かった様な気もするが、玄馬なんか殆どパンダの姿でいるし、単純に変身時間が長かったとも思えない。
いったい何が原因なのか、全く検討も付かない。実際、女のままでの生活が不自由と言う訳ではないのだが、
やはり元々男である以上、受入難い現実だった。


次の日、早速猫飯店に出向き、シャンプーの曾おばあちゃんであるコロンに男に戻れない旨を伝えにいった。
シャンプーは丁度出前の最中で、何時もの可愛らしい声は何処にもなかった。
お昼を過ぎ、店の中には客の姿は全くなく、厨房の換気扇の音が少し耳障りな程だ。
「なあ、ばあさん、俺が何で男に戻れなくなっちまったんだ?何か知らないか?」
食い入る様に質問するらんまにコロンは俯き加減で考え込んでいる。
かなり深刻そうな顔をしているコロンをみて、らんまは意味知れぬ不安を感じた。
「婿どの、まさかとは思うが、その・・・・」
コロンはそういうとまた考えこんでしまった。
「その、何だよ?」
そのはっきりしない態度にらんまの不安が掻き立てられる。
「・・・なあ、婿どの」
考え込んでいたコロンがようやく話し始めた。
「女の姿で自慰をしたことはあるか?」
「えっ!?」
突然の質問に驚きを隠せない。いきなり自慰をしたことがあるかとは・・・・。
らんまの顔が赤くなる。流石に面と向かって質問されると恥ずかしい。
「何だよ、急に・・・そんな恥ずかしいこと言えるわけないだろ?」
照れ気味に話すらんまにコロンは真顔で答える。
「恥ずかしいのは分かるが正直に答えるのじゃ」
「分かったよ」
真剣な眼差しで見つめるコロンを前にして、観念したようにらんまは話し始めた。
「そりゃね、興味がないわけじゃないし、当然の行為だと思うよ」
「やはりそうか・・・・、おぬしは女性の性を自ら受け入れてしまったようじゃの、但し、
それだけでは姿固定はせぬ、もうひとつ大事な要素があるのじゃ」
「なんだよ、もうひとつの要素って?」
すこし間をおいてコロンは喋り始めた


「まさかとは思うが、婿どの、女になりたいと強く思ったことはないか?」
「ば、馬鹿、何言ってんだよ、そんなことある訳ねーだろ!」
「いや、おぬしは、理性で自分は男性だ、と言い聞かせている。その為に、深層心理に眠っている女性になりたい願望が表に表れてこないだけじゃ。
しかし、女の時に自慰をすることで、女性の性的快感を受け、その時に、深層心理に眠る心が表に表れることがある」
コロンはそのまま続けた。
「男も女も心の奥には必ず同性愛の心が眠るものじゃ。但し、普通に生活をしておれば、殆ど表に出てこない。
しかしじゃ、婿どのの場合は違う。娘溺泉で溺れた事により女に変身出来、且つ、人も羨む美人じゃ。
自分でも女性の姿を気に入っていたじゃろ?」
「まあ、確かに、自分の女の姿は気に入ってはいたかな」
少し照れ気味に喋るらんまにコロンは言った。
「婿どのの場合、自慰の時に必ず強い女性になりたいと思う気持ちが現れたはずじゃ、自慰でオーガズムを感じるに至ると、男性としての理性は完全に無くなり、
女性を体でも心でも認め、その女性としての自分でありたいと心の奥底から思ったはずじゃ」
「だけどよ、親父なんか殆どパンダだぜ、しかもオスだ、ということは性的には問題がないし、頭がハゲてやがるから、人間でいたくねーんだろ?
それでも姿固定なんてしてねえしよ、おかしいぜ」


「いや、婿どのの場合は変身するといっても性が変わるだけで、動物に変身するわけではない、だからこそ姿固定が起こるのじゃ」
「なんだよ、それ」
「動物と、人間とでは精神構造が全く異なる、当然知能も全く異なる、となるとじゃ、幾ら人間でいたくないと思ったところで、
その動物の精神構造にあわせる事が出来なければ姿固定は起きないのじゃ、まあ、止水桶という例外もあるがの」
もっともらしい意見だが、何か納得出来ない。自分は男であり、当然心も男である。そんな自分が自慰の時のみ女性になりたいと思ったところで、
そんなことが果たして起こるのだろうか?まあ、確かに、一気に快感が高まり、射精後あっという間に興奮が収まる男の時と、緩やかにゆっくりと快感が高まり、
オーガズムを感じた後も暫く余韻が続き、
その後も幾度と無くオーガズムを感じられる女とは全く快感の質が異なり、
女はいいかも、なんて思った時もあったかも知れないが、心の奥底から思ったことなんてあっただろうか?いや、やはり自分が男である以上、
性的快感のみで心の奥底から女になりたいなんて思わないだろう。
「おい、ばあさん、いい加減な話してるんじゃねぇよ、俺は心も体も男だったはずだ!」
小柄で、可愛らしい女の子が姿に似合わない言葉使いで反論する。
「まあ、婿どの落ち着くのじゃ」
「おちつけだぁ〜」


落ち着けなどと言われて落ち着けるものではない。一昨日まで男として生きてきて(まあ半分女でもあった訳だが)、
いきなり昨日から女になってしまって如何しろというのだ。今まで半分は女であったが、完全な女として生活するのはかなりの抵抗がある。
女というのは兎に角面倒くさいのだ。先ずはトイレである。男のように催したらその辺で立ちションなんてことは出来ない。
必ずトイレで用をたす必要がある。しかも、女性のトイレは何故か何時も込んでいて、用をたすだけなのに10分以上かかることもしばしばだ。
後は生理だ。男でありながら、ある周期に女になると生理になる。これは本当たまらない。この周期は自分でも気をつけて、女にならない努力をするのだが、
突然の雨などで変身してしまうと非常に大変である。
元々トランクスしか穿かないらんまにとってはかなりの一大事で、股に血液が垂れてくる事もしばしばだ。しかも、ひどい腹痛に見舞われ背中も痛い。
この時期はなるべく生理用ショーツとナプキンを忍ばせているのだが、この面倒臭さと体の不調だけは味わいたくない。これを月一回、必ず体験するのは本当に嫌だ。
ただ、得なこともあるにはある。たまにあかねと買い物に行くときは大抵女の格好で、お洒落をする。この方がなにかとと便利で、昼も夜も男に奢ってもらえ、
上手くいけばプレゼントまで買って貰えたりもするのだ。
あかねは嫌がるのだが、男であるらんまにとって、男の下心は丸分かりで、手玉に取ることが可能なため、なんら問題は無いのだ。
しかし、やはり男として生きてきた以上、多少の得があるにせよ、精神的な苦痛が大きい。顔を引きつらせ、考え込むらんまは見ていて哀れででもある。


「婿どの」
「なんでい」
投げやりな態度のらんまにコロンは続けて言った。
「男に戻ることは可能ではあるのじゃが・・・」
「まさか、男溺泉にでも入れって言うんじゃねぇだろうなぁ」
「まあそれもひとつの手ではある、その代わり、今までの反対で、水を被ると男になって、お湯を被ると女になるぞ」
「・・・・・」
なんじゃそりゃ。ふざけていやがる。流石のらんまも声が出ない。
「そんな方法ではなく、完全な男に戻る方法はひとつだけある、とは言っても変身体質は直らないんじゃが・・・」
「今までと一緒ならそれでも良いぜ」
目を輝かせながら、コロンを見つめるらんまに多少戸惑いながらもコロンは続けた。
「婿どの、おぬし、男に抱かれるのは構わないか?」
「・・・・・はぁ??男に、抱・か・れ・る!?おいババァ、ふざけた事いってんじゃねえ!そんなこと俺が出来る訳ねーだろ。
・・・うぅ・・・考えただけで気持ち悪い・・・」
身震いするらんまを見てコロンは言った。
「そう、それじゃ、男に抱かれて心底女が嫌だと思えば、姿の固定が解けるのじゃ」
「うぅ、そんなこと・・・はぁ無理だぞ・・・」
「まあ、焦らず気楽に考えることじゃ」
「おい、ばあさん、婿どのと言う割には、他の男に俺が抱かれても平気なのかよ」
「何を言っておる婿どの、元々男のおぬしが女の格好で男に抱かれたところで数の内に入らんよ。ひゃひゃひゃ・・・」
「人事だと思いやがって・・・」


しかし、如何したものか。猫飯店を後にし、とぼとぼと歩き出す。男に抱かれ、その時に女への嫌悪感が高まれば、
男に戻れるということだが、実際、本当に嫌悪感が沸くだろうか?
むしろ快感が強く、理性が吹っ飛ぶのではないかという不安もぬぐいきれない。いや、自分が心底嫌う相手ならそれはあり得ないだろう。
「う〜ん、すると九能あたりか・・・」
しかし、奴に抱かれるということは、俺が嫌悪感を抱いたところで、九能は大喜びだ、しかも自分は処女だ、何か許せないものを感じ、
九能は止めることにした。後は誰がいるだろう?
その辺の奴らは自分を抱けると知ったら大喜びだろう。それもなんだか許せない。テレクラで10万で抱かせるか・・・
しかし、油ギッシュな臭い息のハゲ親父に抱かれるとしたら、嫌悪感を抱く前に失神しそうだ。
「相手にも俺を抱いたことによる嫌悪感を味あわせてやらねば・・・」
ムースは如何だろうか、奴はシャンプー一筋で俺を抱いたことがシャンプーにばれれば、合わす顔が無いはず。
でも、奴のことだ、シャンプー一筋の一途野郎が俺にふらつくとは思えない、例え変装しても駄目そうだ。
「うーん、後は誰がいるかなぁ・・・」
頭に浮かんだのは良牙の顔だ、奴はあかね一筋と言っておきながら、あかりという彼女を作った浮気野朗だ。
しかもだ、彼女が出来たにも関わらずPちゃんとしてあかねのベットに潜り込んでいる変態野朗でもある。
「良牙かぁ・・・・」
まあ、こいつになら俺を抱かせた後で嫌悪感を味あわすことが可能だろう。証拠写真をデジカメで取ってやれば、一生後悔するに間違いない。
今までの経緯から言って、自分に優しくする女なら誰でも良さそうな態度を取るこいつなら比較的簡単に落とせるだろう。
家でPちゃんをとっ捕まえて風呂場に連れて行き、襲ってやれば良いだけだ。
「しかしだ・・・・そんなことが出来るのか・・・」
幾ら何でも男にヤラれるのは抵抗がある。しかもあの良牙だ。考えただけで身震いする。まあ、それくらいの方が男に戻れる確立は高くなる訳だが。
「よし、男に戻る為だ、仕方が無い」
踏ん切りをつけたらんまは家路に急いだ。


「はぁ〜」
家に着くとらんまは大きな溜息をついた。
ばあさんの言っていたように、本当に男に抱かれなければいけないのだろうか。
しかも、元には戻るけど変身体質は戻らないとか言っていた。結局は完全に男に戻ることが出来ないのに、そこまでする必要はあるのか。
もし、もしもだ、男とSEXしたとして、女を否定するどころか、認めてしまったらどうなるのか。自分自身の自我が崩壊する可能性もある。
聞くところによると、女のSEXは相当気持ち良いらしく、病み付きに近いものがあるとも聞いた。
はっきり言って男と女とでは自分でしていても明らかに差があるのだ。快感の強さはどう考えても女の方が強い。一瞬で終わる男とは違い、長いし何度もイク。
当然、SEXの方が数段気持ちが良いだろう。そうなるとだ、男に戻りたいという気持ちが消えないだろうか?
だとするならば、自分の嫌いな相手とすれば良いのでは、と思うのではあるのだが、やはり気が進まない。
自分が元々男であるのもそう考える理由のひとつだろうが、それだけなのだろうか?
「やっぱり無理だぜ、いくら元に戻れるっていってもな」
とりあえず、もう余計な事を考えるのは辞めた。いくら悩んだところで、答えは直ぐに出ないし、出したくもない。
兎に角、今の現状をどうするかが先決だ。直ぐに男に戻ることは絶望的に近いし、学校にも行かねばならない。
学校の奴らは自分が女に固定されたと聞いてどう思うだろうか?九能以外は皆らんまの変身体質を知っているのだが、固定されたとなるとかなり大変なことになりそうだ。
女の自分に興味を示す奴はかなり多く、女の格好で買い物に付き合え、だとかよく言われたものだ。
「兎に角だ、女を感じさせるのはまずいな」


押入れの奥から、一度も着たことがない学生服を取り出した。詰襟の学生服を着れば多少は男っぽくなるだろう。右京と同じ様な感じになるのだろうか。
何はともあれ着てみることにした。だらしなく垂れ下がる男物のズボンとシャツを脱ぎ捨て、先ずはズボンを穿いてみる。流石にウエストはがばがばだ。
ドカンズボンのようになってしまったが、まあ仕方がない。後は学生服だ。腕を通し、ボタンを掛ける。第五ボタンまで全て掛けてみたが、鏡の前にいる自分はなんとも
情けない格好になっていた。
身長が153センチしかないらんまはかなり小さい。この身長で男物のLサイズを着るのだからこのようになるのは仕方が無いことだ。
「これじゃ、格好悪くてしょうがねーな」
学生服を脱ぎ捨て、先ほど脱ぎ捨てた服を着た。だらしなく垂れ下がる服はみっともない。何時でも男に戻れたときは、この服じゃないと、男に戻った時に困ったのだが、今は女のままだ。
無駄に大きな服を見ると男の自分を思い出す。
「あーやめやめ」
もう如何でも良くなり、らんまはタンスの奥から、ブラジャーを取り出すと早速着けた。長いことノーブラでいると肩がこるので嫌なのだ。
トランクスも脱ぎランジェリーを身に着け、あかねと買い物に行く時に良く着るワンピースを着る。
「ま、取り合えず今日はこの服を着ておこう」
明日の学校はあかねの制服でも借りて登校するしかないだろう。なにか照れくさいものを感じたが、諦めるしかない。


ダイスケは教室に入ると、何時ものように机にカバンを投げ出し、仲の良い友人の所へ向かう。
ホームルームまでは決まった場所で決まった友人と雑談をして過ごすのが日課だ。
五寸釘の机に腰を下ろし、乱馬の椅子に足を掛けると、何時も集まる2人と話始めた。
何時も乱馬が来るのが待ち遠しい。こいつの話は面白いのだ。
良く皆であかねとの仲とか、女としての九能とのお付き合いとかを聞くことがある。
九能との話は良く聞く。風林館高校きっての変態野郎との話は笑い転げるほど面白い。
「乱馬遅せーな」
そんな時、乱馬の机の前に一人の女子が来たかと思うと、カバンを乱馬の机の上に置や否やいきなり肩を叩かれた。
「よう、ダイスケ、おはよーさん」
上を見上げ顔を見た瞬間、ぎょっとした。
女の姿の乱馬こと「らんま」が女子の制服を着てそこに立っているのだ。
「お、お前如何したんだよ、その格好」
教室の目線がらんまに集中しているのが良く分かる。
女子は数人で集まりヒソヒソ話を始めだした。
「まあ、ちょっと訳ありでよ、男に戻れねーんだよな」
可愛らしい姿とは対称的な口調で話す。
「男に戻れない??なんで?何時もの赤いカンフー着は如何した?女でもあの服だったよな??」
「女では大きすぎるカンフー着を、男に戻れないのに一日中着るのはちょっと抵抗があってよ、それにブラジャーつけないと肩がこるし、揺れて邪魔なんだな、これが」
なにを言っているのか飲み込めない。男に戻れないだけでいきなり女子の制服なんだ。それにブラジャーなんて、どの服を着ようが付けれるじゃないか。
それに、何故今まで着た事も無いような服を平気でこいつは着ているんだ?心そのものが男であった為に、女である事を否定していたのではないのか?
「お前、いきなり女子用の制服着るなんてやっぱりおかしいぞ。それに右京は女だけど学生服だ。お前も学生服にすればいいじゃねーかよ」


「学生服はあるにはあるんだけど、大きすぎて格好悪いからな」
「はぁ〜、おまえ女の時、何時も大きすぎる服着てるじゃねーか」
「うるせぇな、まあ、男に戻れない以上、この格好でいるしかねーからよ、買い物位なら女として付き合ってやるぞ。」
そう言った瞬間、聞き耳を立てていた周りの男どもが寄ってきた。らんまはクラスの男どもに取り囲まれ身動きが取れない。
「おいらんま、俺と放課後付き合え!」
「てめえ、抜け駆けすんな、らんまちゃんとは俺が付き合うんだよ!」
「九能に取られる前に俺が・・・」
らんまは頭が痛くなってきた。
「ば、馬鹿ヤロー!お前ら何考えてやがる!俺は男、分かる?お・と・こなんだよ」
「わかってねーな、それが良いんだよ、可愛いけど男っぽい、うん、これぞまさしくネット語の「萌える」だな」
「な、なに言ってやがる!お前ら俺をどういう目で見てやがんだ、まさか異性として見てねえだろうな?」
「なあ、らんま、そりゃお前可愛いからよ、皆狙ってたんだぜ。でもお前が半分男なんであきらめてたんだよ、口には出さなかったけどな」
やはりそうか、それは感じていた事だ。思っていた通り、大変な事態になってしまった。でも男の視線から見たところであまり気にもならなかったし、
女の格好で付き合えと言われた所で断っていた。
しかし、完全な女になってしまった場合、毎日のように口説かれそうだ。下手をすれば、あかねと初めて登校した時のような乱闘騒ぎになりかねない。
「お前らがそういう目で見やがるなら、今日限り女子の制服は止めだ。ちょっと辛いけど何時もの服にするよ、ダボダボで一日中いるのは嫌なんだけどな」
そういうと、周りの男は困った表情を見せた。よほど自分のこの姿が良いらしい。


「ま、まあらんま、そういうな、俺らも大人しくしておくからよ」
「大人しく、だぁ〜?」
小さな姿の可愛い女の子が凄んだところで今ひとつ迫力に欠ける上、逆に周りの男を喜ばす結果になった。
「らんまちゃん、可愛い」
周りの奴らがニヤつく。はあ、こいつらときたら、何で廻りにこんな沢山の女がいるのに俺なんだ?可愛い奴なら沢山いるではないか。
「ちょっと、あんたたち、何やってんのよ!」
あかねが見かねてらんまを囲む男に言い放つ。
「いい加減にしなさいよ。らんまは元々男でしょ、何考えてんのよ、変態!」
あかねの怒りように驚いたのか周りの男どもは自分の席に戻っていった。
「ちょっと、らんま、だから言ったじゃない」
あかねはあきれ顔で言う。
「だってよ、仕方ねーじゃん。ガクランは大きすぎてきれねぇし、かといって女ものの服は学校に着てくるにはちょっと派手すぎだし、
今までの服は大きすぎてダボダボで動き難いし・・・」
「まあ、仕方ないといえば仕方無いけど、気をつけなさいよ」
「なにを気をつけるんだよ」
「なにを?ってあんた分かるでしょ?」
呆れ顔のあかねは時計を見ると自分の席に戻っていった。
「取りあえずの問題は九能くらいなもんだろ」
らんまはもう考えないことにした。


「はあ、今日は疲れた」
らんまは溜息をついた。完全に女となったことで体育とかの着替えは女子更衣室になるのだが、元々男だったらんまに対する
女子の反応は最初のうちは冷ややかそのものだった。
別に女子更衣室に入りたい訳でもないし、女の自分が女の裸を見たところで何も感じない(とまでは流石にいかないけど)のだが、
まるで覗きをしている男のような扱いをされた。
しかもだ、最初のうちは覗きのような扱いをしていたくせに、自分が裸になった瞬間、自分の周りを女が取り囲み胸を触りまくるのだ。
「きゃ〜、らんまくん、胸大きい(はぁと)」だとか、「うわー柔らかい、いいなー私もバストがこれくらいあればなー」とか勝手言い放題だ。
「女ってのは、良く分からねーな」
今まで、男として生きてきた為、女の事には余り踏み込まなかったのだが、女ってのは男以上にスケベであるのだ。
今日の体育の一件以来、クラスの女が自分を完全に女と認めたらしく、らんまに対し、特に身構えることも無く、色んな事を平気で喋りだしたのだが、
この会話はクラスの男に聞かせるとショックを受ける奴もいそうな気がした。
一番びっくりしたのは、クラスで真面目で通していると思った加奈子が実は援助交際をしているという事実だ。体育が終わり更衣室で着替えている時に、
話しかけられたのだが、その内容は驚きのものだった。
まあ、兎に角、ホテルのカードとか沢山持っていて、男によってホテルのカードを使い分けるそうだ。しかも彼氏もしっかりいて、彼氏用の財布まであるそうで、
なんでも彼氏に浮気(浮気なんてじゃねーだろと思ったけど)がバレるのが怖いそうだ。
前、あかねに印鑑が全て押された駅前のホテルのカードをあげようと思ったけど断られたということも聞いた。なんでも、俺とたまにはホテルくらい行けということ
らしかったのだが、真面目なあかねは顔を赤くして怒ったらしい。
後、クラスの2割程は経験済みという事実である。まだ16歳なのに、既に2割が経験済みとは・・・あかねと乱馬の仲も見抜かれており、性的関係は無いことまで知られていた。
男は余り雰囲気に出ないそうだが、女は経験すると雰囲気が変わるらしい。
「しかし、まあ、俺も一応女だからなぁ、あの会話に強制参加させられる訳か・・・嫌だ」
明日のことを考えると少し鬱だ。そんな時、らんまは何か妙な気配を感じた


「おさげの女〜」
うう、やはりきやがった。こいつだけとは付き合いきれねぇ。
「く、九能先輩、お久しぶり」
しかめっ面でらんまは答える。
「おさげの女、会いたかったぞ、風林館高校の制服を着ているということはうちの生徒だったのだな」
「先輩、知らなかったんですかぁ?」
そうらんまが言うと、九能は竹刀を持った手を空高く上げ、雄たけびを上げた。
「ついに、ついにおさげの女の高校が分かったぞー、しかもうちの生徒とは、九能帯刀17歳、こんなに嬉しいことはないぞー!」
はあ、駄目だこいつは・・・・
「先輩、私もう帰りますから」
「ああ、まて、おさげの女、せっかく合ったのだから、デー・・・」
バキッ
らんまのキックが顔面に炸裂する。九能はその場に倒れこんだ。
「たく、顔をあわせると何時もこれだ、やってられねーぜ」
そんな時、らんまのクラスメートの男子が通りかかった。
「よう、らんまちゃん、パンツは純白だったね、かわいい〜」
くっ、しまった。スカートだってことすっかり忘れていた。恥ずかしさの余り顔が赤くなる。
「て、てめぇ、タダ見しやがったな」
らんまが怒ると、クラスメートは慌てて逃げていった。
はあ、やってらんねー。しかし、男に戻るには、恐ろしい試練を耐えなければならない。考えるだけで嫌だ。何とかならならないものか。


らんまが女になってから2ヶ月が過ぎたある日、猫飯店にて

「やっと出来たある。後はらんまに渡すだけね」
シャンプーは厨房の奥で、自分が今しがた作った可愛らしいシュウマイを眺めながらニコニコした。
らんまが女になってからというもの、張り合いがなくなり退屈のし通しだった。しかし、これでようやくらんまも男に戻れる筈である。
「らんま、早く男に戻るあるね」
シャンプーはシュウマイの入った小包を自転車に載せると天道家へ向かい走り出した。
初夏の日差しが気持ち良い。晴れ渡る空には雲ひとつなく、青々と生い茂る草木が風に揺られ、まるで緑の大海原のようだ。
「早く乱馬とデートしたいあるね」
シャンプーの自転車をこぐ足が速くなる。こんな日にデート出来れば最高だ。らんまを早く男に戻して、今度こそは自分に振り向かせようと心に決めた。

そのころ天道家

「それじゃあ、らんま君、宜しくね」
かすみが重そうな荷物を抱えながら らんまに言った。
「ああ、わかったよ」
今日から3日間、天道家では温泉旅行に行くのだという。
らんまも誘われたのだが、女風呂に入るのが嫌だったので断った。
もう天道家のみんなもらんまが女であることに慣れきってしまい、なびきは自分が脱衣場にいても、平気で服を脱いで風呂に入ってしまう。
もしこのまま温泉につれて行かれでもしたら、完全に女を認めてしまう様な気がしたのだ。
「じゃあ、らんま、Pちゃん帰ってきたら宜しくね」
そういや、良牙って最近みねぇな、どこ行きやがったんだ?


「パフォパフォ(じゃあ行ってくる)」
親父・・・なんでこんな時までパンダなんだ?人間に戻れよ。
らんまは一同を見送ると、縁側に寝転がった。新緑の季節のさわやかな風が通りぬける。気持ちの良い風が心地よく、うとうとしだしたその時だった。
「・・・オ」
玄関で誰かが呼んでいる。眠い目を擦りながら玄関へ行くと、シャンプーが小包を持って立っていた。
「ニーハオ、らんま」
「よう、シャンプー、久しぶりだな、今日はどうしたんだ?」
「らんま、私からの差し入れある。あかねから聞いたあるよ、らんま今日から一人きりね。だから、私、らんまの為にシュウマイ作たある」
「おお、シャンプーわりいなー、ありがたく頂くよ」
らんまはシャンプーから小包を受け取った。良い香りが鼻を突く。おいしそうな匂いだ。
「らんま、私、今から、出前あるね、また、夜ご飯作て持てくるある。それと、良牙がブタの姿で倒れてたから連れてきたある」
そういうと、シャンプーは良牙を袋の中から出すとらんまに手渡した。
「おいおい、袋に入れるなよ、ちょっとかわいそうじゃねーのか?」
「余計なことは気にしないね、じゃあ出前いくある」
そそくさと、その場から逃げるように立ち去るシャンプーに違和感を覚えたが、女の俺にちょっかいをかけれる訳もないので、別に気にすることもなさそうだ。
「そんなことより、良牙をどうするかだな」
良牙は寝ているのだろうか、ピクリとも動かない。こいつはお湯を掛ければ男になる。
「一応、若い男女がひとつ屋根の下、というわけか・・・」
ふと、2ヶ月前のコロンの言葉を思い出す。
「うう、出来るわけねー、嫌なことを思い出しちまったな」


まあ、良牙の野郎は自分に全く興味を示さないし、他の男みたいに見境無く口説き落としに掛かることもない。まして襲うなんてことはありえないだろう。
「安心といえば安心だが、全く女として見てねーのはちょっとゆるせねえな」
まあいい、とりあえず、シャンプーに貰ったシュウマイでも食べて見ようか。先ほどから美味そうな匂いが鼻を突く。ちょうど小腹が空いてきた事もあり、食欲をそそる。
小包を開けると、そこには10個ほどのシュウマイが並んで入っていた。まだ湯気が立っているそのシュウマイは見ているだけで涎が出そうだ。
「よし、食べるか」
らんまはひとつ、またひとつと口に運ぶ。福与かな味が口いっぱいに広がり、幸せな気分にさせる。気が付くと既にシュウマイは無くなっていた。
「はあ〜美味かった、シャンプーもなかなか気の効いた事してくれるな」
空の小包をしばらく眺めていると急に眠気が襲いその場でらんまは寝てしまった。


ふと気がつくと、既に日は陰り、冷たい風が窓から入ってくる。
良牙はいつの間にか居なくなり、人の気配のない天道家は静まりかえっている。
「俺、どれ位寝てたんだ?」
らんまはまだ完全に眠りから冷め切っていない重い体をだるそうに起こした。
昼間の少し汗ばむくらいの陽気の中で昼寝をしていたお陰で、汗が背中にべっとりとまとわりつく。
「うわ、大分汗かいたな、ちょっと風呂でも入るか」
何時ものように、下着と寝巻き、タオルを用意し脱衣所へ向かう。
「はあ、なんか体が重いなあ、まだ寝たりないかな?」
妙に重い体に違和感を覚えつつ、何とか裸になると風呂に入った。
風呂桶にお湯を張りながらシャワーを浴びる。昔はこの時点で男に戻れたのだが今は女のままだ。
「まあ、俺もこの状態に慣れきっちまったな〜、今更男に戻ると逆に不快だったりしてな」
一通り体を洗い流して、おさげを解き髪の毛を洗い始めた時、後ろで何か視線を感じた。
黒ブタの良牙が風呂に入ろうとしている。いくら良牙といえども女の裸は見せたくはない。
「ば、馬鹿、はいってくるんじゃねぇ」
慌ててらんまは良牙に怒鳴りつけたが、既に良牙は風呂場に入ってきており、そのままお湯を浴びると、男に戻りらんまを見つめた。
「らんま、話は聞いているぞ、男に戻れないんだってなあ」


妙にニヤニヤしながら話しかける良牙にぞっとした。何かおかしいのである。
「お前しってるじゃねーか!早く出て行け!一応、今俺は女なんだからな!」
激しく怒鳴るらんまを他所に良牙は、らんまをニヤつきながら見つめる。
「ば、馬鹿野郎!なに見てやがんだ!てめぇいい加減にしないと・・・」
「うるせえ、らんま、俺はな、お前が可愛くて可愛くて仕方が無いんだよ」
突然良牙はらんまの肩を掴み襲い掛かってきた。
「な、何考えてやがる、てめぇ、頭おかしくなったんじゃねえか」
良牙の豹変振りは明らかにおかしい。そういえば今日シャンプーが良牙を気絶したような状態で家に連れてきたな。もしかしたら何かまたしでかした可能性がある。
良牙は鼻息を荒くし、目を血走らせている。完全に理性は何処かに吹っ飛んでしまったようだ。となると、自分が食べたシュウマイも怪しい。
「なあらんま、俺はな、お前のことがす・・」
「いうなー!!」
慌ててらんまは良牙の腕を解くと、逃げ出した。完全にやばい、このままでは襲われるのも時間の問題だ。兎に角、水をかけてブタにしなければ、
何をされるか分かったものじゃない。裸のままで逃げ出したらんまの後を良牙が追ってくる。
「くそ〜、シャンプー、あいつ何しやがったんだ、まさか俺を男に戻すために無理やり俺を良牙に抱かせようとしてるんじゃねぇだろうな」
体が熱く、なんだか妙な感覚にとらわれ、足元がふらつき、まともに走れない。
居間まで来たところで良牙に追いつかれてしまった。
「らんま、もう逃がさないぞ!」
後ろかららんまは思い切り抱きしめられた。
「きゃん」
らんまは可愛らしい悲鳴を上げ、その場に座り込んでしまった。
(うう、なんだこの感覚は・・・やばいぞ、やばい、ああ、俺どうなってしまうんだ・・・)
「らんま、俺のこの思い、遂げさせてくれ?」
「ば、ばかいってん・・じゃねー・・・」


何時もなら投げ飛ばしてやるところなのだが、シャンプーのお陰でこの有様だ。
「なあ、らんまそんな嫌そうな顔をするなよ」
「おまえな、俺が誰だか分かってるのか?男なんだぞ」
必死に抵抗をし、睨み付けるらんまに良牙は薄ら笑いを浮かべながら、らんまの体をゆっくりと愛撫する。
「あ、あん、ば、馬鹿、い、いい加減に・・ああん」
言葉とは裏腹に体は素直に愛撫に反応し、今まで感じたことのない感覚が全身を支配する。頭はだんだんとかすみがかかり何も考えられなくなってきた。
「らんま、感じてきたんだろ?」
良牙が耳元で囁く。
「な、な、て、てめぇ〜後で覚えとけ、よ」
「俺にそんな口が聞ける立場か、なあ、らんまよ」
良牙はらんまの秘部に手を当てると軽くクリトリスを撫ぜ、そのまま舌で軽く舐めると吸い上げた。
「きゃん、や、やめ、ああん」
シャンプーのシュウマイのせいなのだろうか、らんまは強烈な快感に襲われた。
「らんま、お前これだけで感じるのか、随分とエロいじゃないか、もう濡れ濡れだぞ」
「な、なにいって、ああん・・・」
既に頭では何も考えられず、理性は飛ぶ寸前だ。良牙の執拗なまでの愛撫はらんまを快感の海へと放り出す。体は捩れ、
自分の意思では如何しようもなくなっていた。
「らんま、俺はそろそろ限界だ、いくぞ!」
その言葉にらんまはゾッとした。元々男である以上、その言葉の意味は薄れる意識の中でもはっきりと理解出来た。
「や、やめて、良牙、たのむ、」


良牙はらんまの言葉には耳を貸さず、らんまの股間へ自分のいきり立つ肉棒をねじ込んだ。
「きゃん」
らんまが可愛らしい喘ぎ声とも叫び声とも取れる声を出す。
頭の中は真っ白になり、強烈な快感が波のように押し寄せてくる。
今まで経験したことのない強烈な快感に頭の中は真っ白になり何も考えられない。
「らんま、気持ちいいか?」
良牙は薄ら笑いしながら耳元で囁く。
しかし、らんまは良牙が何を言っているのかさえ分からない。
「ああん、ああ・・な、なに、りょう、ああん」
必死に言葉を出そうとするも、全く体が言うことを聞かず、更に深く激しい快感がらんまの体を包み込む。
「ああ、んん、あ、ああああん・・・」
体をくの字に折り曲げ喘ぐその姿に良牙は興奮した。
何時もの凛とした姿からは想像も出来ない、淫らに喘ぐらんまがいる。苦しそうに、快感に耐えるその表情も堪らない。
良牙の興奮度はピークに達し、更に激しく腰を動かした。
「きゃあああん、あああ・・・・あっ、ぁ、・・・」
らんまの喘ぎ声が一段と激しくなると、息が出来ない苦しそうな声に変わったその時、急激に良牙に快感の波が押し寄せてきた。
「うぅ、ああっく!」
{きゃあっ!」
らんまはそのまま快楽の渦へ落ち意識を失った。


・・・・・
ふと気がつくと、何故か裸でベットに寝ている。
暗い部屋の中で、良牙は今自分が何処にいるのか分からずにいた。
シャンプーから饅頭を貰った後からの記憶が全くない。
「俺はいったい何をしていたんだ?」
取り合えず、服を着ようと起き上がろうとした時、横でなにやらゴソゴソと音がする。
「ま、まさか記憶のない間に・・・」
恐る恐る顔を近づけると可愛い寝息が聞こえてきた。
「ああ、あかりさんというものがありながら・・・」
後悔の念に苛まれるが今更どうしようもない。ベットに腰を下ろし、力なく溜息をついた。
「シャンプーめ、いったい俺に何を食わせやがったんだ?」
しばらく考え込んでいると突然ベットの中に引きずり込まれた。
柔らかい感触が肌に伝わり、心地よい香りが鼻をくすぐる。
「ちょっと、ちょっと待て、お前は誰なんだ?」
慌てる良牙にその女性は話しかけてきた。
「なんだよ、良牙、俺だよ、わかんねーのか?」
言葉こそ昔のままだが、虚ろな目をした、妙に色っぽいらんまがそこにいた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待て、ま、ま、まさか俺はお前を・・・ああ、考えたくねぇ〜」
「酷いな、初めてだった俺をあそこまで感じさせておいて・・・お前のお陰で完全に女に目覚めたよ」
乱暴な言葉使いとは裏腹に、女性特有の柔らかな、そして色っぽい動きで良牙の腕に絡み付いてきた。


「お、俺はシャンプーに変な饅頭を食わされて・・・」
良牙は慌ててらんまの腕を振り解いた。
「なんだよ、良牙、俺が嫌いなのか?なあ、俺をもう一回抱いてくれよ」
良牙に抱きつき、思い切りキスをした。舌を絡ませてくるらんまに良牙は動揺を隠せない。
女性経験の浅い、というよりも奥手で今までまともに女性と手すら繋いだことのない良牙にとって、いくら目の前の女性がらんまであったとしても、
その興奮度はかなりのものだった。
「ら、らんま、ちょ、ちょっと待ってくれ」
自分の感覚が狂っていく。今一緒にいる女はらんまなのだ。彼女でもなんでもない。昔からのライバルだった「男」である。
しかし、今、目の前に体も心さえも完全な「女」になってしまった嘗てのライバルがそこにいるのだ。しかもだ、記憶がない時ではあるにせよ、
一線を越えてしまった上、キスをされたとき、今まで経験したことがない心地よさが全身を包んだのだ。
(俺はいったいこいつのことをどのように思っているんだ?)
「なあ、良牙、俺のことが嫌いか?」
神妙な顔で悩む良牙を見て、らんまは涙目で良牙を見つめる。
「い、いや、そ、そういうわけじゃ・・・と、突然のことで何がなんだか・・・」
「じゃあ、俺をもう一回抱いてくれよ」
いったいどうすればいいのだ?自分の目の前の女は今まで知っているらんまとはかけ離れている。もう訳が分からなくなってきた。
「ああ、俺はどうすれば・・・」


「なあ、良牙」
頭を抱え込み、俯く良牙にらんまは声を掛ける。
「うるせぇ・・・」
良牙は小さい声で唸るように言い返す。
らんまは良牙に寄り添うと、後ろから抱き付く。
「良牙、俺はいま、完全な女だぞ、何をそんなに悩むんだよ」
「ば、馬鹿ヤロー、お前はいいさ、俺は割り切れないんだよ」
らんまの正体を知らなければ、間違いなく虜になっているだろう。
はっきりいってかなりの美人だ、しかも可愛い。
あかねさんやあかりさん以上だと思う。
しかし、元々男という固定観念が払拭出来ない以上、いくら、完全に女だといえ、割り切ることが出来ない。
シャンプーのお陰で妙な関係にさせられた上、しかもらんまが俺に女として惚れやがった。
今の動きを見ている限り男っぽさは何処にも感じられない。
しいて言うならば、口調が男っぽいところ位だ。


「なあ、良牙ぁ〜」
甘い声でらんまが耳元で囁く。
良牙の体が素直に反応する。
「くっ、俺とした事が・・・」
流石にゾクゾクする。コイツは今完全な女、心も体もだ。余計な事を考えるのはよそう。
「ええぃ、らんま、後悔するなよ!」
良牙はらんまを押し倒す。
「きゃあ、りょ、良牙、あああん」
突然強烈な快感に襲われ、らんまは頭が白くなる。
猛烈な良牙の攻めに、気が遠のくほどの快楽が全身を包む。
この快感は男では味わえない奥深いものだ。
快感の波が次から次へと押し寄せる。男として生きてきた今日までの時間は長い夢のようにも感じる。
「ああ、良牙・・・」
喘ぎ声に混じり、自分の名前を呼ぶらんまに、更なる興奮を良牙は覚えた。
「らんま、俺は男としてのお前は忘れることにする、今日からお前は完全な女だ」
そういうと、更に激しくらんまをせめた。らんまは体を捩じらすと、軽く痙攣をする。
「う、もう駄目だ・・・」
「きゃああ、」
良牙は強烈な快感が襲うと同時に、一気に力が抜けた。
ベットに倒れこむように横になると、急激な眠気が襲い、そのまま深い眠りについた。






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