著者 : 名無しさん@ピンキー ID:XPrFuM4J 氏

その1 ー >>686
開始:03/11/18
最終:03/10/26
その1 − >>688

【 無 題

雨粒がぽつりと、乱馬の鼻先に落ちた。乱馬は忌々しげに、空を見上げる。
一面に垂れこめた灰色の雲は、今にも地上に大粒の雨を降らせそうだった。
「ちくしょうっ!」
吐き捨てるように言って、乱馬は駆けだした。しかし、無情にも降り懸かる雨は、
乱馬のお下げ髪を濡らし、衣服に染みとおった。濡れそぼったランニングシャツは丸い胸に張り付き、
腰つきを際立たせ、色っぽい姿を浮かび上がらせた。
(なんで、俺がこんなめに……)
らんまはいつもの不運と己の体質を呪いながらひた走った。雨はじくじくと下着にまで染みとおり、
不快な心地を産む。ふと、らんまが脇の空き地を見やると、ひっそりと佇むテントがあった。
良牙のテントであることは、一目瞭然だった。
(良牙の奴、戻ってきてたのか……。)
らんまは雨宿りにちょうど良いと思って、テントに駆け寄ると、ぶっきらぼうに声をかけた。
「りょうがぁー!」
すると、ガサゴソという物音とともに、良牙の何やら言い淀む声が聞こえた。
「何言ってんだ?良牙、中に入れてくれよ。」
降りしきる雨の中、しびれを切らしたらんまは出入り口のファスナーに手をかけ、
良牙の悲鳴のような声にも躊躇せず、網幕を一気にまくり上げた。
「良牙ぁ、ちょっと雨宿りさせて―――。」
らんまはテントの中をのぞき込み、そう言いかけたところで良牙の様子を見て、思わず口が滞った。
足を崩した良牙の傍らには、いかがわしい雑誌とちり紙が転がり、下半身の着衣は陰部を半分露出させている。
何より密閉されたテントの淀んだ空気の中に、むせ返るような体液の匂い。間の悪い訪問者に対して、
良牙があわてて何を取り繕おうとしていたのかは一目瞭然だった。
らんまは気まずげに視線を落とすと、凍り付いた姿勢のまま何も言い出せずにいる良牙を余所に、
「え、えっとぉ、俺やっぱりいいや。雨も降り止んできたし……それじゃっ、邪魔したな。」
「待てっ!」
くるりと背を向けて、ざあざあと降りすさぶ雨の中にそそくさと舞い戻ろうとするらんまを、良牙は上擦った声で呼び止めた。


がちゃがちゃとズボンを整えようとする良牙に、らんまは首だけふり向けた。
「な、何だよ、俺は何も見てなんかないぞ?それに俺、用事思い出したから……。」
「いいから、ちょっと待て!」
良牙はそっけなく言って立ち去ろうとするらんまを羽交い締めにして、引き戻す。
「こ、こらぁっ、そんな汚い手で触るんじゃねえよっ。」
「貴様、やっぱり見てたんじゃねえか!」
「いや、それは……。」
「街中に言い触らして、俺の評判を落とすつもりじゃねえだろうなっ!」
「ちょっと落ち着けっ。」
らんまは良牙の体を突き放すと小さく溜息をついた。必死な様子の良牙は、縋り付くような目に涙さえ滲ませている。
らんまは良牙と向かい合うと、諭すように言った。
「おまえも気の小せえ奴だなあ。ちょっと、ごにょごにょ……してたのを見られたぐらいで慌てやがって。」
姿勢を正して押し黙る良牙を余所に、らんまは例の雑誌を手に取った。
「しかも、こんなもんで頬染めて、おまえのライバルとして情けねえよ。」
言って、らんまは雑誌をぱたぱたと降った。やおら一葉の写真が、雑誌のページの中程から舞い落ちた。
らんまが何気なく写真をつまみ上げるのを見て、良牙ははっと気付くと、あわててそれを奪い取ろうとした。
良牙を無視して、写真をのぞき込んだらんまは思わず気が遠くなるのを感じ、頭を抱える。
写真に写っていたのは、薄着であどけない表情を浮かべながら眠る、らんまの女の姿だった。
写真の中のらんまは気持ちよさそうに寝乱れ、めくれ上がったシャツの裾から胸がのぞき、
大きめのスポーツトランクスからすらりと伸びた脚は色ぽっくタオルケットと絡み合っている。


「これはその……。」
何か言おうとする良牙をよそに、らんまは軽い目眩を感じながら、呆然と写真を見つめる。
しばらくの沈黙の後、らんまはようやく我に返ると、白々とした視線を良牙に送った。
らんまはすくっと立ち上がると、必死に言い繕おうとする良牙に対して言い放った。
「へんたい。」
「ちょっと待ってくれ、ぐはっ。」
追いすがろうとして肩を掴んだ良牙の顔に、らんまの拳がめり込んだ。良牙はその場に崩れ落ちる。
「てめえ、見損なったぞ。」
らんまは吐き捨てるように言って、背を向けた。らんまの右腕に、良牙のバンダナが絡み付く。
らんまは目を瞬かせると、鋭く良牙を睨み付けた。
「てめえ、どういうつもりだ?」
「話を聞いてくれ。」
良牙の尋常でない様子に、らんまは思わず身構えた。良牙は突然、バンダナを握りしめた手を引いた。
良牙は、急に左手を引かれてバランスを崩したらんまの足を鋭く払った。らんまは甲高い声を上げて、
テントの床に転がる。ぶつかったランタンや食器がガラガラと音を立てた。良牙は、床に倒れ伏すらんまの腕を掴むと、
のし掛かるようにして押さえつけた。らんまは口惜しげに呻いた。
「良牙っ、何しやがる!」
良牙は、半ば悲鳴のようならんまの訴えを無視して、らんまの身体をねめつけるように見回す。
らんまは不安で高鳴る胸の鼓動を抑えつつ、必死に逃れようとした。しかし、興奮した良牙の手は、
痛いほどにらんまの腕を締め付け、体をよじることすら許さない。太ももに固いものを感じてらんまは身震いした。
おもむろに近づいてくる良牙の顔をらんまは首を振って必死に避けたが、良牙はらんまの顎を掴むと無理矢理に唇を塞いだ。
「んんっ!」
らんまの声になららない声が上がった。



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